500点⇒600点
公式問題集の音声を徹底的にリピーティング

7対3の割合でリスニングを重視

【花田】600点を目指す人に必要なのは、リスニングのテコ入れです。多くの人は「苦手なものを克服しなければ」と考えてリーディングに時間を割いてしまいがちですが、リーディングの得点を上げるには時間がかかり、成果が出る前にモチベーションが下がってしまいます。それに対しリスニングは、正しい方法で鍛えれば比較的短期間で効果が出ます。まずは、しっかり音に触れて、音楽のように楽しみながらリスニングに取り組んでいくのが近道となるでしょう。

まったくの初めて、あるいは久しぶりにTOEICを受験するという人は、まずは英語の音声に慣れるため、あえてTOEIC以外の教材を使うのも有効です。TOEICではさまざまな難易度の問題がランダムに並んでいますから、英語に苦手意識のある人がいきなり模試形式の問題集に取り組むと辟易へきえきとしてしまう恐れがあります。最初は少しでも興味が持てる素材を使って英語に触れる時間を増やしていくのがおすすめです。洋画やYouTubeなどでも構いませんし、中学英語のテキストを入手して昔の記憶を呼び戻すのもいいでしょう。

並行して、『公式TOEIC®リスニング&リーディング問題集』、いわゆる公式問題集をどんどん解いていきましょう。強化パートを決めて集中的に取り組むことが重要です。600点を目指す人であれば、リスニングセクションでパート1、2のテコ入れを徹底しながら、リーディングセクションのパート5に取り組むといいでしょう。初級者が正解しやすい問題を確実に取っていくという戦略です。リスニングとリーディングの学習時間の割合は、思い切って7対3を目安に。「1、2、5」という3つのパートで確実に正解できるようになってから、別のパートに取り組んでみてください。

このとき、問題集をただ解くだけではいけません。必ず公式の音声を利用して「リピーティング」を徹底していきましょう。リピーティングとは、英語の音声を聴いては止め、同じように発音する学習法で、どんなレベルの人にも絶大な効果があるトレーニングです。日本人はこの訓練が足りないがために、いつまでも正しい音の感覚が身につかず、聴き取りができないと言われています。公式問題集の音声を一文ずつ聴いては止め、モノマネのような感覚で発音することを地道に繰り返してください。

リピーティングのポイントとなるのは、先に文字を見てしまわないことです。別冊の『解答・解説』を見ながら読み上げても効率がよくありません。それでは単なる音読です。音読はリピーティングより負荷が低いので、効果が限定的です。出てくる単語が簡単であればあるほど、「このくらいなら全部知っているから大丈夫だ」という錯覚に陥ってしまいます。

文字を見ずに音だけを聴いてリピートしてみると、中・上級者でも意外に聴き取れていない単語がたくさんあることに気づきます。もし、音を止めてリピートができなかった場合には、一度巻き戻して、同じ音をかけてリピートしてみてください。それでもわからなければ再度繰り返します。そうやって2、3回はベストを尽くした後に、解答編に書かれている文字と照らし合わせてみる。そこで初めて「自分が聴き取れていないのはここだ」と認識できるのです。

マネできない音は一生聴き取れない

英語が聴き取れない理由は、大きく分けて2つあります。それは「語彙力の欠如」と「音の感覚のズレ」です。多くの人は、語彙力の欠如のせいだと思っていますが、実際には音の感覚がズレているために聴き取れないケースが多いのです。それを克服するためには、できるだけナレーターの特徴をつかみながら音マネをするのがいいでしょう。たとえば単語同士の音のつながり、あるいはイントネーション、母音の暗さなどをマネするのです。これができるようになると、その音を聴き取れるようになります。逆にマネできない音、つまり自身の脳内に組み込まれていない音は、一生聴こえないままで残ってしまいます。

「スピーキングの試験ではないから、口に出さなくてもいいだろう」と考えてしまうかもしれませんが、自分で正しく発話できれば、聴くのも容易になります。音の感覚の補正に努めることは遠回りのように見えて、実際には近道だといえます。非効率的な学習の仕方から脱却するためには、正しいリピーティングを実践して、英語の音の感覚を養っていく、正しい音の回路を脳内に組み込んでいくことが重要です。

リピーティングの有効性は私自身の経験からも断言できます。私はアメリカの大学に留学していましたが、最初は講義がほとんど聴き取れませんでした。そこで講義を録音して、寮に戻ってからすべて書き出す、いわゆるディクテーションをやっていました。すると、聴き取れない箇所に穴が開きます。それをルームメイトに見せて、「ここはなんて言っているの? 書いてみて」と尋ねます。そのときに初めて気づいたのは、決して語彙力の欠如が原因ではないということだったのです。 

実際、講義に出てくる単語の多くは書かれれば意味がわかるものでした。自分が思い込んでいる音と、実際にアメリカ人教授が発話している音の間にギャップがあったために聴き取れなかったのです。