織田家臣団を構成する武将たちが、信長在世中から、信忠が「織田家の跡継ぎ」「二代目」と認識していれば、だれもが真っ先に、信忠の子三法師が織田家を継ぐと言い出しただろう。だが、そうでなかったところを見ると、26歳であっても、まだまだ「おぼっちゃま」の域を出ていなかったことが想像できる。
もし信長が本能寺で死なずに天下統一を果たし、「二代目」を信忠としたうえで天寿を全うしていたら……。
信忠は天下をきちんと治めることができただろうか。織田家宿老の柴田勝家、滝川一益、新興勢力の明智光秀、羽柴秀吉らに舐められることなく、織田家を統括することができていたのか。
いささか不安ではある。
信長は、織田家という大企業のトップとして、あまりにも偉大で、苦言を呈することもはばかられるほどに圧倒的な力で部下を押さえつづけた。だが、そのトップが倒れたとき、「二代目」が部下を操縦しつづけることができるのか。
信忠の存在は、後継者育成の良いテキストになりうるはずだ。