2つ目のメリットとしては、北の脅威に備える必要がなくなることだ。韓国は毎年GDPの10%程度を軍事費に充ててきたし、駐留米軍にも頼らざるをえなかった。北の脅威が取り除かれて国防コストを大幅に削減できることは、韓国としては非常にありがたい。

3つ目のメリットは、核である。韓国では北の核の脅威に対抗して自分たちも核を持つべきだという声が相当高まっているが、北朝鮮と統合すれば自動的に「核のボタン」が手に入る。フタを開けてみれば大した核兵器ではない可能性は高いが、「グレーターコリア=ニュークリアパワー」になることに大きな意味がある。だから韓国は北朝鮮に「核を放棄せよ」とは言っていない。「統一するまで持っていろ」というのが、韓国の本音なのだ。

以上のような“統合のメリット”が存在しながらも、韓国は南北統一を急いではいない。ドイツ統一の際、西ドイツ国民は5%のサータックス(付加税)を5年間導入して統一コストを負担したが、多くの韓国人は、そのような負担には否定的である。自分たちが生きていくのに精一杯だからだ。

韓国の経済人の多くは、労働コストが10分の1の北朝鮮を、まずは“植民地化”したいと考えている。傀儡政権に「北朝鮮共和国」を運営させて、中国と香港の一国二制度のような関係で、民主化と近代化を進める。世界中から開発投資を呼び込んで、北の生活レベルが上がってきたらどこかのタイミングで統一する。この2段構えが、韓国にとってのベストシナリオである。

北朝鮮を植民地にしたいのは、中国も同じだ。朝鮮戦争で北朝鮮を助けて、以後、長年面倒を見てきたのが中国である。その間、韓国は北朝鮮を“イジメ”こそすれ何の手助けもしてこなかった。中国としては、そうやすやすと北朝鮮を韓国に渡すつもりはないだろう。