「水虫薬を担当したときには足元が痒くなり、眼洗薬『アイボン』を担当したときはドライアイになりました。担当を外れたり、開発が一段落すると症状が出なくなる。とことん考えるうち、だんだんその気になってしまう。一種の職業病かも」(江口さん)

「『アットノン』開発中はよく脚がつったりしていましたが、今は出なくなりました」(柴田さん)

新商品の着想はネットやマスメディアではなく、あくまで生の情報に触れること、と口を揃える。

「ドラッグストアやスーパー等によく行きます。医薬品を担当していると医薬品売り場が気になりますが、他の売り場で売れているものを知るのは大事。それを自分のところに持ってきたらどうなるか考えてみます」(柴田さん)

「電車の中で『何でこういうことしてるのやろ?』などとあれこれ考えながらつい他人をガン見して怒られたことも。店頭では、手にした商品を買わなかったお客さんに『すいません、何で買わなかったんですか?』と聞きます。名刺を出すこともありますが、大阪の方はお話好きが多いので、結構喜んでしゃべってくれます」(江口さん)

「アットノン」を担当してから、柴田さんは夫婦で買い物に行く機会が増えたという。

「以前は妻が買い物をするときは、車の中で長時間待っていましたが、実は女性向け商品の売り場に行くまたとないチャンス。どこにでもついていくことにしました」

それを聞いた江口さんがすかさず「夫婦円満になるわ」と笑った。厳しい開発競争の中で、思わぬ副産物も生まれたようだ。

(浮田輝雄=撮影)
【関連記事】
なぜ3000円の男用パンツが86万枚も売れたか
なぜ不況でも10万円の靴が売れるのか
売り上げ3倍「山スカート」はなぜ、女心をつかめたか
なぜ、雑誌Martに取り上げられる商品はヒットするのか
誰も手を出さない「1割の悩み」に商機あり -ワコール・小さく見せるブラ