10年ほど前に「発送電」を実施したドイツだが、送電線の拡張が急務とされている。(AFLO=写真)

日本は、地理学的にも日本列島の東から西で、大体1時間半程度の“時差”がある。例えば夏の電力需要のピークが午後2時だとすると、東から西にピーク電力の時差が生じる。全国的に融通し合える電力ネットワークができれば、ピーク時に互いに融通できるから日本全体としての発電量は抑えられる。夏の暑い時期は北から、冬場は南の地域から電力を融通することで、ピーク電力は随分助かるのだ。

アメリカやヨーロッパでは電力の融通が可能なのだが、日本では電力会社の“縄張り”が決まっているため電力の融通が利かず、それぞれの地域でピーク電力に対応するしかない。福島第一原発事故後に発生した例がそうだったように、トラブル時に他の地域から電力を融通してもらうのも一苦労だ。

最強のエネルギーコストで発電する

私は日本の電力産業は、「発電」「送電」「配電」「原発関連事業」の4つに分割するべきだと考えている。まず「発電」の部分は完全に自由化する。自由化すれば低コストの発電者が参入してくる。現実的にはCO2排出などの環境規制は必要だが、基本としては、誰でも自由に参入できるようにすべきだ。

では、発電会社が誰に電力を売るかといえば、基本的には「送電」を一手に引き受ける「高圧送電会社」に対してである。高圧送電会社は、9電力がそれぞれ所有する高圧送電網を“資産”に換算して、各社の資産の比率に応じた全国一律の公社を設立する。本来は国が送電網を買い取って国策会社をつくればいいが、そんな金はないだろうから、9電力が資産を持ち寄って共同経営するのだ。