原発を輸出産業として育てよ

「配電」については、特殊な事情を除いて、現状の9社による地域独占を認めるべきだ。この場合は地域独占を認めないと、配電インフラそのものが2重、3重投資になり非効率だからだ。

ただし、「独占」は保証しない。例えば企業が隣に燃料電池の発電所をつくってプライベートに発電しようというときには、地元の配電会社を噛ませないで勝手にやって構わない。配電会社の地域独占が認められるのは、送電会社から買った電力を一般家庭や事業者に配電する事業だけだ。

FITの義務としては、高圧送電公社ではなく、地域独占の配電会社が負って、太陽光や風力など再生可能エネルギー由来の電力(3000ボルト以下の小規模電力)を買い取る。その他、電線の地中埋設など環境投資も地域の配電会社の仕事だ。

そして4番目は「原子力発電」。これまでは国策で各電力会社に原発を持たせてきたが、2年前に発生した原発事故により、大きなリスクであることがハッキリした。小さな電力会社では人材的にも技術的にも、原子炉の過酷事故には耐えられない。そこで高圧送電公社と同様に、電力会社が原子炉の資産持ち寄りで原子力公社のような一元的組織を立ち上げるのだ。

この原子力公社のミッションは4つある。1つ目は既存原子炉の再稼働とオペレーション。何があっても電源と冷却源を確保できる安全対策を実施して、原子炉の再稼働と運営を行う。存立が経済的に厳しくなっている日本原子力発電はこの組織が吸収合併するべきである。

2番目は廃炉。原発の廃炉作業は完了までに30年以上かかる。日本では原発用地はリース契約だから、施設を解体して、放射線を取り除いて、更地に戻して地元自治体に返さなければならない。膨大なコストと時間のかかる仕事である。

3番目は使用済み核燃料の処理。中間貯蔵施設に10年保管した後に再処理工場でウランとプルトニウムを抽出し、残りの核分裂生成物を含んだ核廃棄物はガラス固化体にして、地下1000メートルの貯蔵施設に1000年眠らせなければならない。