「夫」の化けの皮
その後、白無垢の豪華な花嫁衣裳に着替え、最後の花魁道中に臨んで、晴れ姿を吉原に詰めかけた人々に見せたあと、瀬川は大門の外で待っている鳥山検校のもとに向かった。
女郎は貧しい親の手で妓楼、すなわち遊女屋に、年季証文と引き換えに売られていた。楼主、すなわち妓楼の主人は、自分が買い取った「商品」である女郎を、原則10年(それはさまざまな理由で延ばされた)の年季が明けないかぎり、滅多なことでは解放しなかった。
そんな状況下で、客が妓楼に身代金を支払って年季証文を買い取り、身柄を引き取ってくれる身請けは、女郎にとって堂々と吉原を離れられるほぼ唯一の道だった。しかし、よほどのスターでもないかぎり、客も高額の身代金など支払わない。1400両(1億4000万円程度)という、江戸中で話題になるほどの巨費と引き換えに、富豪のもとに落籍した五代目瀬川は、ほかの女郎たちの羨望の的だったに違いない。
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