最先端の研究によって動物たちの不思議な生態が明らかにされている。例えば、魚類の認知行動に関する研究。公立鳥取環境大学学長の小林朋道さんは「魚が足し算・引き算をできることを示す研究結果が得られている。魚の脳の神経回路の一部が人間の脳内回路の一部と類似しているのかもしれない」という――。

※本稿は、小林朋道『ウソみたいな動物の話を大学の先生に解説してもらいました。』(協力・ナゾロジー、秀和システム)の一部を再編集したものです。

アカエイ
写真=iStock.com/bthompso2001
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訓練すれば魚は足し算や引き算ができるようになる

魚など水に棲む生物は体を環境に最適化させています。最近の魚類の認知行動に関する研究は、彼ら(魚類)の「思考能力」が優れていることを、次々に明らかにしています。

直近の例で言えば、ドイツのボン大学の研究チームによって行われた実験で、訓練すれば魚は足し算や引き算ができるようになることが明らかにされています。

研究の対象にされたシクリッド(アフリカと南米の湖に生息する魚類)の一種とエイの一種で、彼らに次のような思考が可能かどうかが調べられたのです。

ある装置を作り、装置の扉にマークを何個かつけて5秒以上見せます。次にマークのついた扉を開けて奥に進ませ、そこで、横に並べた2枚のパネルの一方には、扉のマークの数にもう一つマークを加えてつけ、他方のパネルには、もう二つのマークを加えてつけます。

つまり、一方にはマークを1プラスして、もう片方にはマークを2プラスしたわけです。そうしておいて、もし魚が1プラスのパネルのほうへ行けば正解として餌が与えられました。この学習ではマークの色はすべて青にしたそうです。

そして、この実験と並行して今度はマークの色を黄色にして次のような実験を行いました。奥の2枚のパネルの一方は、扉のマークの数より一つ少なくし、もう一方のパネルでは、マークを一つ加えてつけました。

つまり、扉のマークから1マイナスと1プラスにしたわけです。そうしておいて、もし魚が1マイナスのほうへ行けば正解として餌が与えられました。

以上のルールで何回も何回も訓練し、本番の実験を行いました。

その結果、シクリッドでは足し算(青のマークでの実験)で77%、引き算(黄のマークでの実験)で69%正解したそうです。

エイでは、足し算は94%、引き算は89%が正解だったそうです。