突撃を知らせるマカジキの発光する体

さて、そんな中で「マカジキが体を光らせ、自分の突撃を仲間に知らせる」研究についてです。

マカジキは時速100km以上のスピードで泳ぐことができる世界最速の魚類です。彼らは群れで行動し、イワシ等の獲物の大群を発見するとロケットのように突進し狩りを行います。

ただし、ロケットダッシュで群れから獲物に向かって突進するのは一匹ずつ。

イワシとマカジキ
写真=iStock.com/izanbar
※写真はイメージです

もし複数の個体が突進したら、突進したマカジキ同士で長くて鋭い口吻による相打ちが起こってしまう可能性があるからです。互いにコミュニケーションをとりながら、突撃個体を伝え合っているのでしょう。

しかし、どうやってそれを伝え合っているのでしょうか? そのコミュニケーション法については、これまで不明でした。

2024年、ドイツ・フンボルト大学ベルリンの研究チームは、ドローンを使った研究(①)によって、次のような事実を明らかにしました。それは「マカジキは狩りで、次の瞬間突進する個体のみが体を明るく輝かせ、それ以外の待機組は暗い体色のままで待機している」、「狩りで突進した個体は捕食が終わると暗い体色に戻る」というものです。

より正確な情報を得るため、研究チームは、マカジキが、イワシの群れを攻撃する様子を収めた12本の高解像度ビデオクリップを分析し、現象を確認しました。その結果、体の輝化は、群れの他個体にさまざまな情報を伝えている可能性があり、突進による捕食の機会は群れのすべての個体に公平に与えられていることも含め、狩りのルール等の調整に重要な役割を果たしていると推察しています。(一部改稿)

① Rapid color change in a group-hunting pelagic predator attacking schooling prey

【関連記事】
「お母さん、ヒグマが私を食べている!」と電話で実況…人を襲わない熊が19歳女性をむさぼり食った恐ろしい理由
明智光秀は「恩知らずな歴史的悪者」ではない…カリスマ・織田信長が「本能寺の変」を防げなかった本当の理由
宴席の残り物を食べてなんとか栄養補給する日々…江戸最大の歓楽街・吉原の遊女たちのわびしすぎる食生活
国民を肥満から救うはずが…バター、ポテチに課された「世界初の脂肪税」がたった1年で廃止になったワケ
「応仁の乱の原因は日野富子」はデマである…学習院大学教授が解説「歴史的大乱の本当のきっかけ」