現代のマーケティングでは情緒的価値が重視されやすい
現代のマーケティングでは、商品の機能性にもとづく機能的価値は、他社から模倣・後追いを受けやすく、また消費者のニーズや好み、流行や飽きのスピードが加速していることもあり、すぐ手詰まりになりやすいと考えられる傾向にある。そのため、色や香りのバリエーション、デザイン、コラボレーションなどを通じた、消費者の気持ちや嗜好性を満足させる情緒的価値を早くたくさん作っていくことが重視されやすい。
しかし、昔も今も、商品の本質は機能的価値にある。そして、機能的価値の開拓や拡大は、もっと追求することができる。機能的価値の追求をすぐに諦めて、情緒的価値ばかりを偏重してしまうと、短期的には乗り切れても、長期的に見れば、商品・ブランドの寿命が短く終わってしまいやすくなる。
技術とマーケティングの組み合わせで機能的価値は増やせる
めぐりズムは、もちろん情緒的価値についても強化している。特にアイマスクは、バリエーション豊富な選択肢から好みを選べる香りの展開や、眠りを楽しむゲーム「ポケモンスリープ」とのコラボのような期間限定の取り組みなど、消費者を楽しませる情緒的価値も数多く提供されている。
ただ、商品の土台となる強みは、機能的価値の追求・拡充にこそある。前述のように、次々に新商品を開発して機能的価値を多面的に拡大していることに加えて、既存商品のバージョンアップも著しい。アイマスクの発熱時間は、もともと約10分だったものが、改良の結果、倍の約20分まで持続できるように進化している。また、蒸気の力でシートがこれまでの約2倍に膨らむように改良し、やわらかく膨らんだシートが目元に密着するようになった。
「めぐりズム」のように、社会やライフスタイルの変化を察知しながら、技術力とマーケティング提案を巧みに組み合わせることによって、商品の機能的価値は増やしていくことができる。こうした機能的価値の多面的拡大ができれば、日本のものづくりには、まだまだ多くの発展の余地が見つけられるだろう。