2010年のテレビ番組、2014年以降のインバウンド需要が追い風に
当初は、中高年の女性をメインターゲットにして、肩こりや腰痛、疲れや不調を、血行促進で改善させる医療機器として位置付けられていた。それが思うように広まらない苦境を打開するため、働く女性をメインターゲットに変更し、蒸気温熱による気持ちよさや癒やしを追求する商品として、2007年、新たに雑貨として開発されたのがアイマスク・タイプの「蒸気でホットアイマスク」である。ターゲットや訴求ポイントを変更した新商品を発売し、試しに一度使ってもらう体験機会を強化するマーケティングを通じて、少しずつ成果をあげていった。
そうした中で、めぐりズムは2つの好機を得て、成長軌道に乗ることになる。1つは、2010年、テレビ番組で芸人のケンドーコバヤシさんがめぐりズムを紹介し、「このアイマスクをつけると新幹線の移動中に10秒持たない(※すぐ眠くなる)」といったコメントで絶賛したことだ。これをきっかけに、試しに使ってみる消費者が急増した。もう1つは、2014年以降、インバウンドの爆買いブームの対象になったことで、観光客からお土産としての人気が高まったことだ。
2020年からのコロナ禍の期間には、日常にさまざまな制限がかかる中で、自宅での楽しみや癒やしの需要の高まり、そして心身の健康意識の高まりを受けて、めぐりズムの利用はさらに伸びていった。その後、反動で「健康疲れ」が生じたアフターコロナにおいても、手軽に無理なく続けられる唯一無二のヘルスケア商品として、めぐりズムは成長を続けている。
機能的価値を多面的に広げることに成功
ビジネスをヒットさせるうえで、技術とマーケティングは「両輪」と言える存在だ。めぐりズムは、花王が持つ広範囲にわたる技術で商品を開発し、巧みなマーケティングで消費者のニーズを広げて普及させることで、ロングセラー商品になっている。
2005年の誕生以来、「めぐりズム」シリーズの商品は、多岐にわたって展開されている。一般医療機器として販売されている「蒸気の温熱シート」をはじめ、管理医療機器の認証を受けた「メディカルアイケアマスク」、香りのバリエーションを増やした「蒸気でホットアイマスク」、夜用の首に貼るシート「蒸気でグッドナイト」、蒸気が足を包み込む「じんわりスチーム足パック」などがある。特に注目したい点は、めぐりズムが新たな機能性を作り、消費者に提案し、広めることで成功を収めている点だ。
めぐりズムは、商品の機能的価値を多面的に広げることに成功している。例えば、商品の使用目的においては、発売当初の「蒸気温熱パワー」はコリ解消や疲労回復がメインだったが、「蒸気でホットアイマスク」など雑貨にも商品の幅を広げ、温かい蒸気を感じることによるコンディションの維持や調整、睡眠導入の促進、リフレッシュとその後の集中力の向上、などが加わった。
2022年の「蒸気でホットアイマスク」のリニューアルでは、コロナ禍が続き、リラックスや気分転換が求められている状況を踏まえて、目に触れる不織布の感触が「ふわふわ」になるように改良した。