全容がわからないうちは、感情にのみ限定した謝罪

②「楽しみになさっていましたよね」「不愉快な思いをおかけいたしました」

などと、共感の言葉で感情に寄り添います。

怒りは二次感情と言われています。怒りになる前に、一次となる感情があるのです。

例えば、予約をしていたレストランに出かけたところ、予約が入っていなかったとします。それが大切な人の誕生日の食事だったらどんな気持ちになるでしょうか。

「相手に対して申し訳ない。悲しい。悔しい」などの一次感情が先に生じ、それが怒りへと変わるのです。

私は万単位で企業のクレーム対応に向き合ってきましたが、感じのいい対応者は、こうした一次感情を読み取り、上手に寄り添いの言葉を口にしています。

そして、まだクレームの全容がわからないうちは、

「ご不快な思いをおかけして申し訳ございません」

などと、感情にのみ限定した謝罪をしているのも、感じのいい人の特徴です。

事実確認ができていないうちは、「うちのスタッフにミスがあり、申し訳ありません」などと起きた事象についての謝罪はしません。

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言葉を用意しておけば、とっさの対応に困らない

③「どのようなことがあったのか、お聞かせいただけませんでしょうか」

リアクション→共感+限定謝罪の次は、事情や事実確認のための詳細をヒヤリングします。加えて、相手の要求についても確認します。

もし、対面での対応であれば、お客様と正面で向き合うのではなく横並びになってヒヤリングをするのがお勧めです。真正面から向き合うと「対決姿勢」になりやすく、攻撃的な態度を助長してしまうことがあります。その点、横並びになると、「一緒に解決策を考える」という協力の構図が生まれ、相手の怒りを鎮めやすくなります。

④対処(適切な対応を伝える)

じゅうぶんなヒヤリングをした後は、確認のうえ会社としての対処を、毅然と伝えます。

普通のクレームであればここまでの対応で収まりますが、こちらが丁寧に対処説明を繰り返しても、前述のような理不尽な要求をし続けるお客さまがいます。ここで、「モンスタークレーマー」の可能性が出てきます。

そんな時に有効なのが「エスカレーション」、つまり上司対応に切り替えることです。

・「私ではじゅうぶんな対応ができませんので、責任者に引き継ぎます」
・「お客様のご意見を上の者に伝えてまいりますので、少しお待ちいただけますか?」

などと、あらかじめ毅然とした言葉を用意しておくと、とっさの時に困りません。対応を引き継ぐとともに、担当者自身の心の負担を減らすことができます。