もちろん、残り7%のバーバル(言語)コミュニケーションを無視してもよいということではない。外資系PR会社、フライシュマン・ヒラード・ジャパン社長の田中愼一氏によれば、両者を一致させることが大事だという。
「言語と非言語のメッセージが一致していないと相手は不信感を抱きます。そうなると、人は非言語のほうを信じます。『彼はあんなことを言っているが、目つきがおかしい。本心は違うぞ』となるわけです」
問題は「本心」である。こんなエピソードがあるという。
「ある政治家が選挙活動中にこんな作戦を編み出しました。支援者の家を訪ねるときに、玄関のドアが開く瞬間、全身全霊を込めて『ラブラブ光線』を放射するというんです。本心から『あなたを愛しています』という気持ちになって支援者と対面するのです。もちろん本心ですから嘘ではない。あえていえば自己暗示でしょう。これで99%はうまくいくというのです」
本心と行動とが一体化したとき初めて信頼感が生まれるという。その意味で、ヘッドハンター井上氏の指摘も示唆に富む。人材を見極めるときは「一貫性」を重視するというのだ。
「まず1つは、その方の考え方が首尾一貫しているかどうか。一本筋が通っていれば、どの側面からボールがきても、その方なりの明確な答えが返ってくるはずです。ところが、大企業の中間管理職に多いのは、上にも下にもいい顔をしたい風見鶏タイプです。目的は成果をあげることなのに、『好かれること』が目的化している。こういう人は、右に行くか左に行くかの決断を求められているのに、相手にあわせて別々のことを言ってしまう。これではダメです」
もう1つは「風評の一貫性」だ。
「外資系企業が幹部を採用するときによく行うのが『レファレンスをとる』ということです。現在の勤務先やその前の勤務先の上司、主要な取引先の責任者など5~6人に対して『あの人はどんな方ですか?』とヒアリングしていきます。このときに『たいへん快活な人』『おとなしい人』というチグハグな評価が出てきたら要注意です。どちらがその方の本来の姿なのか確認しなければなりませんし、もし悪意をもってゆがんだ像を伝えられているのだとしたら、その方が相手との関係構築に失敗しているということになります。どちらにしても、好ましいことではありません」