挨拶するときやどうしても伝えたいことを言うときは、しっかりと視線を合わせる。だが、長すぎるとかえって相手に威圧感や不快感を与えるので、「3秒から5秒にとどめるべき」という。

口元も大事だ。大森氏によれば「口角を上げて、上の歯を6本見せるのがスマイルライン」。

見落としがちなのがオブジェクト(ビジネスツール)である。

「お客様の前で汚い書類を出したら、その人はだらしないと思われます。折れ曲がった名刺、くたびれた鞄も同様です。パソコンなどIT機器の型が古いと、話の中身まで古いのではないかと誤解されかねません。実は私も、IT企業で講演した際に古い型のパソコンを持ち込んでしまい、参加者からすぐに指摘されました。もしかするとその日は、100%伝わるはずのところが80%しか伝わらなかったかもしれません」

オブジェクトのうち効果をあげやすいのがメガネである。使い方によって印象を大きく変えることができるからだ。

「30代前半の営業マンがイメージを変えたいとやってきました。取引先は中小企業の社長さんです。弱点だったのは、目元がかわいいということ。相手に子供っぽく見られていたのです。そこで、メタルフレームでくっきりしたデザインのメガネをかけてもらいました。これによってシャープな顔立ちになりました。ヘアスタイルやスーツなども変えた結果、営業成績があがったということです」

もっとも、自分の印象を引き上げるために必要なのは、以上のように爪先立つようなことばかりとは限らない。

たとえば、日産自動車のカルロス・ゴーン社長。東日本大震災で一部設備が損壊し、休業を余儀なくされた福島県のいわき工場へ作業着とヘルメット姿で乗り込み、従業員とともに気勢を上げる様子がテレビCMで流された。

「フランスから送り込まれた超エリートではなく、頼りがいのある日本人の工場長のようでした。ゴーンさんは来日当初、くっきりした顔に角張ったメガネをかけ、よけいに怖い印象を与えてしまっていました。しかしいまは、視力回復手術を受けてメガネを外し、温和な表情になっています。高いスーツを着て、いかにも有能そうに見せるだけが外見力ではありません。いかに相手に受け入れていただくか、リーダーであれば周囲の方の士気をどれくらい高められるかが大事なのです」

大森メソッド社長 大森ひとみ
武蔵野音楽大学声楽科卒。日産自動車ミスフェアレディ、大手人材派遣会社教育部長を経て大森メソッド設立。2011年、国際イメージコンサルタント協会の最高位であるCIM(certified imagemaster)に認定され、業界を代表する世界の9人に。

経営者JP社長 井上和幸
1966年、群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社などを経て、2010年より現職。経営人材の採用・育成、転職支援を手がける。著書に『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』等。

フライシュマン・ヒラード・ジャパン社長 田中愼一
1978年、本田技研工業入社。83年よりワシントンDCに駐在、政府議会対策、マスコミ対策を担当。94年セガ・エンタープライズ入社、海外事業を担当。97年フライシュマン・ヒラード日本オフィスを立ち上げ、代表就任。
(永井 浩=撮影)
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