東京都は「財政支援」を打ち出したが…

2024年9月26日付東京新聞は「区の火葬場新設後押し 財政支援、都が方針」の見出しで都区内の火葬料高騰をめぐり、東京都が都市計画交付金などによって、区の火葬場整備を後押しすると報じた。

この記事によると、複数の区議会で公営火葬場の新設を求める請願や陳情が採択されていることを踏まえ、都議会での「関係自治体に支援を行うべきだ」との公明党議員の代表質問に対して、佐藤智秀総務局長が「特別区が新たに火葬場整備を行う際には支援する」と答えた。都によると、前述の臨海斎場(港区や大田区などが2004に建設)は、都は区側の要請に応じ、都有地を安価で売却したほか、火葬場整備の費用約61億円のうち計18億円を交付したという。

しかし、人口過密地帯での火葬場の新設には、資金問題だけではなく、住民の合意という問題が立ちはだかる。必要性を理解していても、自宅の近くに火葬場ができるとなれば反対する人は多いだろう。最近の火葬場は技術進歩で、環境対応も進み、煙突から火葬の煙が立つというようなものではないが、イメージはよくない。

新設に成功した横浜市の特殊事情

人口が密集する自治体でも火葬場新設に成功した例もある。横浜市だ。横浜市内には4つの市営火葬場が設けられているが、慢性的に火葬能力が不足しており、また港北区など東京都心に近い東部エリアの住民にはかなり遠い。そこで横浜市は2018年ごろから市営火葬場の新設検討を本格的に開始した。

場所は京浜急行生麦駅(鶴見区)から約1.2キロの工業地帯にある鶴見区大黒町の市有地だ。2026年10月に供用開始となる見通しだ。新たな火葬場の建設が可能になったのは、周辺に住民がほとんどいない工業地帯に市の所有地があったからであろう。

斎場整備事業の進捗状況等について(横浜市「整備通信No.7」より)
横浜市「整備通信No.7」より

「火葬船」というアイデアもあるが…

この問題に対する解決策として、火葬船の計画が発表されたことがある。2008年4月7日に日本財団が東京都内で記者会見を開き、海上で火葬を行う「火葬船」構想を盛り込んだ報告書を発表した。「技術的に可能だ」とし、船は2600トン程度の大きさを想定、火葬炉を4基設置し葬儀用のホールも併設するものだ。メリットとして、「移動可能な施設のため、陸上の火葬場と比べて、建設時に近隣住民の反対運動を回避しやすいことだという。