製品のライフサイクルに沿ったサポート。自分たちの事業の差別性を1つのコンセプトで定義し、将来に向けた発展の方向性を示しておく。実際、会社発足半年後の09年4月、社長に着任した金井宏芳はその方向性に基づき、「イカ釣り」の方法を見いだすのだ。金井が話す。
「製品のライフサイクルに沿って、リコールの前の前兆をたどると、メーカーのお客様相談室へのクレームに表れていました。そこで開発したのがクレームのあった製品の『返品・交換サポートサービス』です。われわれが関わると返品率が一気に高まる。これは安定的な収入が確保できます。その取引先とはリコール対応のお手伝いもできる。将来的には『車のことで困ったらJAF』と思い浮かぶように、『家電のことで困ったらヤマト』といわれるような展開を考えています」
リコール対応支援にはその後、同業他社も参入した。だが、「すべてをワンストップで行えるのはうちだけでオンリーワン。先にマーケットを押さえナンバーワンになる」(金井)と動じない。宅急便も「オンリーワン」の商品として生まれ、その後、同業他社が続々参入。競争状態となったが、サービスの幅を広げて差別化を進め、「ナンバーワン」を維持した。リコールサポートサービスも、グループ力で差別性を打ち出す。さらには事業の定義を明確にすることでサービスの幅を周辺部分に広げてブランド力を高め、「オンリーワンからナンバーワンへ」を目指す。それがヤマト流のやり方だ。
ラストワンマイルの配達を集約代行
2つ目の事例、13年4月に始まる大規模施設内での集約配送「ビル・タウンマネジメントサービス」も現場生まれだ。
大型ショッピングモールやオフィスビル内の荷さばき場で、同業他社の宅配便も一括して荷受けし、テナントやオフィスまで“ラストワンマイル”の配達を代行する。従来、各支社支店が独自に行っていた「館内物流」に着目したのは、ヤマト運輸ビル・タウンマネジメント推進室室長、入社12年目の宮原陽平だ。