安いが安っぽくない:百均は「知り合いと会ったら恥ずかしい」
デフレ時代を象徴する百円均一ショップも、発想の転換を迫られている。百均だから多少は野暮ったいデザインでも仕方がないと消費者が考えてくれたのは昔の話。いまは百均業界も、安いが安っぽくない、おしゃれな店づくりが主流だ。知り合いと会ったら恥ずかしい店からは客の足も遠のいてしまう。
藤野氏は業界に起きた変化をこう語る。
「先鞭をつけたのは、業界2位のセリアです。以前、牛角がムーディな店づくりをして新しい焼き肉店の利用の仕方を提案して業界を変えたように、セリアも百均に見えないおしゃれな店づくりにこだわりました。それが消費者にウケて、業界2位だったキャンドウを抜き、1位ダイソー矢野博丈社長に『セリアにやられた』といわしめた。いまではダイソーもおしゃれな店を出しています」(藤野氏)
たしかにセリアの業績は好調だ。12年3月期は、経常利益53%増。過去最高の売り上げと利益を計上している。
気になるのは、おしゃれな店づくりのコストだ。百均ビジネスは利益率が低い。薄い利益の中から内装費を捻出するのは簡単ではないだろう。
「セリアは独自にPOSシステムを導入。在庫状況を可視化してロスを減らすとともに、計画的な仕入れを実現しました。計画的な仕入れはメーカーにもメリットがあり、セリアとしては割引交渉がやりやすくなります。またデフレが加速して、100円の価値が高くなったという一面もある。さまざまな要因が重なって、おしゃれな店づくりを実現したのです」(藤野氏)