中身よりコロモが大事:薬は衣で効き目が変わり、ハコで売り上げが変わる

【フロイント産業】薬効成分は、体のなかのどこで、どれだけ溶けるかで効果が変わるため、同社が持つコーティング技術が重要になる。

医療もこれからの成長が期待される分野だ。しかし、藤根氏は「薬そのものより、外側が面白い」と指摘する。

「私の注目はフロイント産業です。同社の主力は薬の造粒装置。とくにコーティングする機械は国内シェア7割以上を占めています。また薬の溶けやすさをコントロールするための添加剤も扱っています。12年2月期の経常利益は前期比60%増。今期も過去最高益更新の見通しです」

コーティングなど外側の部分は薬のおまけのようなもので、あまり儲けにならない気がする。しかし実は、中身よりコロモが大事らしい。薬の粒のうち、薬効成分はごく僅かで、大部分が添加剤の場合も多い。薬をきちんと働かせるためには、添加剤などで薬が溶けるスピードや吸収を調整する必要がある。そのノウハウがないと効き目が違ってくるのだ。

「フロイント産業は機械や添加剤とともに、製剤のノウハウを提供できる点に強みがあります。それを頼りにしているのがジェネリックの製薬会社です。ジェネリックメーカーは、薬効成分をつくれても、それを製剤化するノウハウに乏しい。そこで同社と組むために機械や添加剤を購入します。ジェネリックはこれからさらに伸びる分野。ジェネリックメーカーほぼすべてと取引がある同社も将来性は高い」(藤根氏)

【朝日印刷】第3種医薬品「チョコラBBピュア」(エーザイ)の包装。医薬品もイメージで差がつく時代だ。

同じ視点で藤野氏が評価するのは、12年3月期で13期連続増収となった朝日印刷だ。同社は薬の箱や能書きを印刷する会社。医薬品包装でナンバーワンだ。

「医薬品の包装は少量多品種で、なおかつ薬事法で厳しい規制があるため特殊な知識が必要です。そのため参入障壁が高く、かつて大手印刷会社も進出を断念したことがあります。一方、朝日印刷は富山で配置薬の印刷からスタートした老舗。ノウハウが蓄積され、メーカーにデザインを提案するくらいの企画力もある。医薬品包装界のトヨタのような会社です」(藤野氏)

医薬品のニーズが高まれば、コーティング装置や包装資材など外側のニーズも高まる。伸びる分野を見つけたら、その外側にビジネスチャンスを見出すのもいいだろう。

(坂本道浩=撮影)
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