増える園児と減る園児:補助金に絡めるかどうかが成否を左右する
幼児市場に特化したビジネスで業績を伸ばし続けている企業もある。保育事業を展開し、6期連続最高益のJPホールディングスだ。同社はもともとパチンコ店のワゴンサービスの会社だった。事業は順調に成長したが、出産後に仕事と両立できずに辞めていく女性が多く、社員が定着しなかった。そこで社内に託児所を設置。それをきっかけに既存の保育所の姿勢に疑問を持つようになり、子育て支援事業へと転換した。12年3月期の経常利益が前期比33%増で、6期連続の増益だ。前出の藤野氏は、同社の強みをこう分析する。
「いま自治体の間で、保育園の管理・運営を民間に任せようという動きが広がっています。その中で脚光を浴びているのがJPホールディングスです。給料の高いベテラン保育士を抱える公立保育園と違い、同社の保育士は若い人中心で、コストが低い。それと同時に保育士の教育やメンタルケアに力を入れているので、行政から厚い信頼を得ています。また社長の山口洋氏は自ら大学院に通って保育士の資格を取るなど、真摯な経営姿勢も評価されている。行政と連携が必要なビジネスでは、こうした安心感が大きな強みになります」(藤野氏)
同じ子育て事業でも異色のサービスを提供しているのが、過去最高の純利益を出した幼児活動研究会だ。同社は幼稚園に講師を派遣して、体育指導のプログラムを提供。体育指導に特化したサービスはオンリーワンだ。どうして子どもの数が減っているのに売り上げが伸びているのか。TIW代表取締役の藤根靖晃氏は、次のように解説する。
「待機児童が発生しているのは、主に0~1歳児。もう少し上の年齢の幼児が通う幼稚園では、少子化によって園児の取り合いが起きています。園児にきてもらうには、何らかの差別化が必要。そこで外部の体育指導サービスのニーズが高まっている」
ただ、体育指導が保護者に人気があるなら、同社が直接、体育教室を開いて幼児を集めてもいいはず。じつはそうしないところに、子育て支援事業が儲かる理由がある。
「幼稚園は経営者や園児の保護者に自治体から補助金が出ます。もし幼稚園を通さずに独自に教室を開くと、補助金の恩恵にあずかれず高コストになる可能性がある。幼児向け体育指導サービスは、公的な支援があるからこそ成り立つのです」(藤根氏)
補助金の存在が大きいのは、JPホールディングスの保育園事業も同じだ。子どもの数は減少しても、社会的要請の強いところには行政からお金が出て、商機が生まれる。共働き家庭の増加により、保育園は不足して待機児童が発生し、幼稚園は余って園児の取り合いが起きている。増える園児と減る園児。そこに新しいビジネスチャンスが生まれているのだ。