システム手帳現る
1980年代、名入(年玉)手帳の優勢が揺らぎ始めることになります。それはイギリス発の「ファイロファックス」が1984年に日本に上陸して以後起こる、システム手帳のブームによってです。
システム手帳は「バイブルサイズ」とも呼ばれる大きなサイズ、リフィルを出し入れできるバインダー構造、そして「ファイロファックス」一式36,000円という価格設定など、手帳についての「常識をことごとく覆」すものでした。「ファイロファックス」はその価格にもかかわらず「熱狂的に支持され、一大ブーム」を形成し、時をおかずして国産メーカーもシステム手帳の生産・販売に着手するようになります(『手帳進化論』24p)。
舘神さんは、システム手帳は「手帳の概念を解体」(『手帳進化論』25p)した点で意義があると述べています。つまり、企業からあてがわれた手帳をそのまま使うのではなく、自分自身で手帳を選び、「カスタマイズ」(同上)できるということを知らしめたのだというのです。
舘神さんによると、1990年代になるとシステム手帳はPDAに押され、人気に陰りが見られるようになるといいます(とはいえ、『日経ビジネスアソシエ』2008年11月4日号でのアンケートを見る限りでは、紙の綴じ手帳の利用者が52%に対し、システム手帳利用者は18%で、利用者がまったくいなくなったわけではありません)。しかし、この陰りによって再び名入(年玉)手帳の時代がやってくることはありませんでした。舘神さんによれば、1990年代の不況期、コスト削減のために名入(年玉)手帳を廃止する企業が増えたためです。現在は、最盛期に比べて名入(年玉)手帳の発注数は半分程度になっているとのことです(『手帳進化論』25、28、33p)。
名入手帳とシステム手帳の時代が去り、残ったのは市販の手帳でした。こうして、実にさまざまな種類の手帳が生産・販売されるようになったのです。さらにこれらの手帳は利用者のニーズに合わせ、年々進化を遂げています。そして、このようにさまざまな手帳が売られているからこそ、「手帳の種類が多すぎて選べない!」「自分にぴったりの手帳を選ぼう」(日本能率協会マネジメントセンター『手帳300%活用術』4p)として、手帳の選び方と使い方を指南する「手帳術」もまた刊行されるようになっているわけです。