TOPIC-4 「第二の自分探し」としての女性30代

表を拡大
表 女性向け30代論対象書籍

今週は30代論です。まず、女性の30代とはどのような時期だと語られているかについて見ていきましょう。

「20代が『第一の自分探し』の時代だとすると、30代は『第二の自分探し』をしなければならない10年間なのです。つまり、もっと深く自分を掘り下げる、ということです。自分がわかっていなければ、自分を幸せにすることもできないのですから」(横森、1p)

「20代は大人としての予行演習の期間で、本当の人生は30歳から始まる」(中山、2p)

男性向け「年代本」では、30代は20代での蓄積を成果に変え始める時期だという見解と、「自分探し」のラストチャンスだと捉える見解がそれぞれ見られました。女性向け「年齢本」における30代の位置づけは後者、つまり「自分探し」に向いている著作が多いといえるのですが、ラストチャンスとまでは急かされていません。まだまだ「自分探し」を続けていこう、というスタンスだといえます。

しかし、先の引用に「第二の自分探し」とあるように、20代の「自分探し」と30代のそれとは違うものだと語られています。では、それらはどう違うのでしょうか。次のような言及から考えてみましょう。

「30代は、家庭に入る人、子どもを持つ人、仕事でキャリアアップしていく人……、それぞれが別の道を歩む時期です。30代が、20代と大きくちがうのは、すべてにおいてやり直しが難しい……というより、『難しいと感じてしまう』ことなのです」(マーチン、2-3p)

「(仕事や専業主婦といった道を選んだのち:引用者注)30代は、そこに落ち着いて住みつき、今後はインテリアやライフスタイルを考える時代。自分が本当には何を欲していて、どんな暮らし方が似合うのか、考え、創造する時代なのです」(横森、1p)

厚生労働省の「人口動態統計月報年計(概数)」(2011年)によれば、女性の平均初婚年齢は29.0歳、第1子出生時の母平均年齢は30.1歳となっています。つまり30代とは、結婚およびその後に連なる出産等のライフイベント経験率が増加し、個々の人生がそれぞれ「別の道」へと分岐していく時期だということができます(このような見方は特に近年のものではないとは思われますが)。30代論は、このような「別の道」への分岐がある程度進んだうえで、そのやり直しや、そこでの暮らし方を掘り下げて考えることをこの時期の「自分探し」と位置づけているといえます。

しかし、どう掘り下げるのか、どう「自分探し」をするのか、その基本原理は20代論と同様です。まず「自分探し」のスタートラインにあるのは、自分自身を受け入れることです。これは前回見たように、恋愛・結婚という文脈に関しても同様なので、一気に見ていきます。

「欠点や未熟さがあっても『それも自分』と認めること。その上で『私でもやれることがある』と信じること。自信がないからこそ、成長もするのです」(有川、63p)

「幸せとは『自分を好きでいられる時間をより長くする』『自分を好きでいられる状態をキープする』ということです」(横森、5p)

「幸せな恋愛、結婚を望むなら、自分を好きになることが第一歩だと思います」(伊達、17p)

人の意見に左右されるのではなく、自分がどう考えるのかを大事にしようとするスタンスも同様です。

「『××しなければならない』『××してはいけない』と、自分を縛っていると、自分を認めることもできなくなるし、やれることがどんどん減っていってしまう。それで一番苦しい思いをするのは、自分なのだ」(和久井、76-77p)

「 『こうあるべき』『こうあらねば』は捨てて、もっとワガママに、ワガママ上手になりましょう。自分なりの幸せは、そこからスタートするのです」(横森、4-5p)

「『人は人、自分は自分。勝ち負けなんて、どうでもいいじゃない』と開き直れるかどうか、です。一人ひとり、生き方はちがいます。周りとの比較なんて愚か。周囲や世間一般の人と自分を比較している以上、人の価値観にとらわれて、伸び伸びと生きていくことはできません」(有川、70p)

すべては自分がどう考えるか次第だ、ということになるのであれば当然、自分の人生は自己責任だとする考えがここに重ねられます。

「自分の幸せに唯一責任があるのは自分」(有川、68p)

「自分の意志で、覚悟を持って決めたことは、自分で責任を負えるから、どんな決断でも、後悔することはない。引き替え、他人の意見に流されて『だってそうしろって言ったじゃない』などと言い訳ができるような決め方をすると、結局は思い通りにならなかったときに後悔するのだ」(和久井、27p)

「どっちにしても自分の選択ですから、後悔はしないのがお約束。後悔して誰かを責めても、いいことはひとつもありませんからね。誰にとってもいちばん大切なのは、『自分の本音』です」(横森、35p)

ここまでは20代論とほぼ共通するスタンスですが、30代論ではより積極的に、自分自身の人生を自ら切り拓いていこうという主張が、さまざまな比喩を用いてなされます。たとえば以下の通りです。20代論の基調は不安、迷い、焦りといったものでしたが、30代論のそれはより明るいものであるように私には見えます。

「“究極の自分”をプロデュースしてみましょう」(有川、66p)
「人生のドラマの脚本をつくるのは、自分しかいませんよ」(有川、91p)
「自分のドラマの主役は自分である、そしてそのドラマのプロデューサーも自分である」(中山、21p)
「オートクチュールの自分」(中山、186p)
「自分で創り上げる人生はアート」(横森、4p)