がん治療で、いい主治医かどうか判断するには、何に注目すればいいのか。藤田医科大学腫瘍医学研究センター長の佐谷秀行さんは「まずは、がんのステージに応じた標準治療をきちんと提案できているかどうかが重要だ。そのほかにも、医師の実力を見抜く問いかけや、優秀な医師が口にするフレーズがある」という――。(第2回)

※本稿は、佐谷秀行『がんが気になったら読む本 生きぬくための最新医学』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

ダブレット示しながら患者に説明をする医師
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
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良い腫瘍医は「標準治療は何か」に答えられる

私たちのようにがんを専門にしている者の立場から見た、“良い腫瘍医”、つまり良いがん専門医の5つの条件を考えてみます。

まず何よりも、がんのステージに応じた標準治療を、きちんと提案できるということです。

特定のステージにあるがんの治療に対して、最も有効であると現時点で認められている治療法を、標準治療と呼びます。したがって、それを患者さんに提案するというのは、最も重要な仕事です。したがって、「このがんにおける標準治療は何ですか?」と尋ねられて、きちんと回答できるのが良い腫瘍医です。

ただし、すべてのがんに標準治療があるわけではありません。たとえば、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がんなどのように、患者さんの数の多いがんは、がんの病理学的および分子生物学的性質やステージによって標準治療が決まっています。しかし、患者さんの数の少ないがんに関しては、標準治療が完全には定まっていないものもあります。

がんによっては、手術を先におこなってから抗がん剤や放射線治療に進むか、逆に抗がん剤や放射線治療を先におこなってから手術に進むか、確定できていないものもあります。そのような選択をおこなう時に、きちんとデータに基づいて患者さんに説明した上で医師自身の見解を伝えることがきわめて重要です。

優秀な専門医は「セカンドオピニオン」をすすめてくる

次に、セカンドオピニオンを尋ねることをむしろ自分から患者さんにすすめるような医師は、きわめて優秀ながん専門医です。

自身の見解に自信を持っていて、自分の考える治療方針が科学的にも臨床的にも最善の方法だと信じながら、さらに新しい考え方や方法がないか謙虚に学びたいという気持ちがあるからこそ、ぜひ他の医師にも尋ねてみてくださいと言えるのです。

もちろん、標準治療が完全に決まっているがんについては、セカンドオピニオンを尋ねる必要がないことも多々あります。しかしながら、がんというのは患者さんご自身の問題です。これから命をかけて治療にのぞむわけです。だから患者さんには、すべて納得し、気持ちの迷いが完全になくなるまで情報を集める権利があります。医師としては、実際問題として必要かどうかにかかわりなく、セカンドオピニオンを尋ねたいという患者さんの意思を尊重するべきなのです。

なお、「セカンドオピニオンを尋ねてもいいですか?」と問いかけた時に機嫌が悪くなるような医師は、ぜったいに避けた方がいいでしょう。くり返しになりますが、そういう意味でも、これは医師を見るためのリトマス試験紙になる質問です。