患者ひとり一人によって「状況」は違う
セカンドオピニオンについて、いくつか補足しておきます。
患者さん1人ひとりによって状況が違うため、手術にはアクシデントがつきものです。私の場合も、手術から1カ月くらい経ったところで発熱が起こり、検査をしてみると体内に感染があることがわかりました。これは、医療行為に問題があったわけではなく、私自身の免疫機能が下がっていたのが原因だろうと考えられるアクシデントでした。
こういう場合に医師は、自分の病院できちんと対処したいと考えます。というのも、セカンドオピニオンを求めるという目的で、こうしたアクシデントを別の病院に持っていってしまうと、そちらでは背景を十分に把握できないまま判断を下さざるを得なくなることが往々にして起こるからです。
もちろん、いかなる場合にも患者さんにはセカンドオピニオンを求める権利があります。しかしながら現実には、こういうケースもあるということを知っておいていただきたいと思います。
そういう意味でも、「今の状況に関して、セカンドオピニオンを聞いてもいいですか?」と医師に尋ねるのがベストなのです。
「最近のデータでは」と話す医師は勉強熱心
3つ目は、経験だけに頼らず、新しい知識と技術を身につける努力を常に絶やさないことです。かつて医師の世界では経験に頼るということが非常に多かったのですが、これだけ医療が多様化し、急速な進歩が続いている現在では、もうそれだけではやっていけません。
患者さんへの説明の中に「最近のデータでは〜」というお話が出てくれば、その医師がよく勉強しているという証拠です。自分自身の経験ではなく、新しいデータ、新しい知識によるとこういうことがわかり、こういう治療がおこなわれている。それをきちんと説明できる医師ということですね。
4つ目は、メディカルスタッフ――看護師や別の医師など――が、自分ががんになった時に診てほしいと考える腫瘍医は、間違いなくきわめて優れた医師です。患者さんの立場ではなかなか手に入りにくい情報だと思いますが、この事実を知っておいていただければ、何かひょんなことで参考になる機会があるかもしれません。
5つ目もきわめて重要なのですが、自分の専門、あるいは専門外の医師との交流があり、必要に応じて信頼できる専門医を紹介できるということです。というのも、がんの患者さんであっても、たとえば循環器の問題など、ほかの病気が起こってくる可能性があるからです。その時に、きちんとその分野の専門医を紹介できる医師は、優れていると言えます。他の領域の医師とのコミュニケーションをするという、連携能力も優れた医師の条件です。