米国で20日、大統領就任式が行われ、第2次トランプ政権が発足した。自国第一主義を掲げるトランプ氏は、本当に「世界の警察」をやめるのか。政府文書や専門書をもとに国際情勢をYouTubeで解説している社會部部長さんの著書『あの国の本当の思惑を見抜く 地政学』(サンマーク出版)より、一部を紹介する――。
演説するトランプ次期大統領
写真=ゲッティ/共同通信社
米西部アリゾナ州で演説するトランプ次期大統領(=2024年12月22日)

なぜアメリカは日本を守ってくれるのか?

日本やNATOなどの大陸諸国はアメリカやイギリスなどの海洋国家の支援を受けることで、自らの安全を保障できます。潜在覇権国()も、近場の大陸諸国の台頭を防止する上で、海洋国家の関与に助けられます。

※将来的にすべての国を支配する勢力を持つ覇権国になるかもしれないほど強い国

しかし、1つだけ未解決の疑問があります。それは、「海洋国家は何を得るのか」です。海洋国家の関与によって、大陸諸国が救われることはわかりましたが、海洋国家は何を目当てに大陸諸国を助けるのでしょうか? 海洋国家だって自国の生存が第一であり、わざわざ遠くの大陸諸国まで守ってあげる道理はないはずです。

例えば、日本やドイツはアメリカに「守ってほしい」とお願いしますが、アメリカにはそれを拒否する権利があります。アメリカが守らなければならない絶対的な義務はありません。もしこれを拒否して、日本とドイツが潜在覇権国に征服されたとしても、それはアメリカの責任ではありません。

だとすれば、アメリカが外国を義務的に守る今の体制に、合理性はあるのでしょうか? 要するに、800か所の海外基地、100兆円以上の軍事費、数十万人もの米兵を海外に投じるよりも、ユーラシア大陸からは一切手を引いて、本土の防衛だけに集中する方が、より確実かつ楽に、アメリカの生存を守れるのではないでしょうか?

「大陸政治に可能な限り一切関与しない」

実は、このような主張は「非干渉主義」という、アメリカで長年根強く支持されてきた考え方です。

非干渉主義は、他の大国から海で隔てられていて、直接的に侵略される可能性が低い海洋国家で支持されやすい発想です。イギリスでも、幾度となく登場してきました。

1723年にイギリスの初代首相ロバート・ウォルポールは、「私の政治方針は〔大陸政治に〕可能な限り一切関与しないことだ」として、ヨーロッパ大陸に介入する負担を減らすことを訴えました。ウォルポールのこの方針は、アメリカ人の思想にも広く影響を与えました。アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンは1796年、自身の辞任演説にて、次のように述べてアメリカ非干渉主義の原型を作りました。