「The Atlantic Monthly」は150年の歴史を持つ雑誌で、内容は政策が中心。記事ははっきりしたテーマのもと、比較的短い3~4ページずつで興味深い意見や分析がたくさん載っています。さらに、より深く掘り下げた長い記事を読めるのが「The New Yorker」です。取り上げるテーマも政治から社会問題まで広範囲で読み応えがある。

日本語の雑誌では、やはり政治から経済まで、優れた識者の意見を聞かせてくれる「Voice」を愛読しています。

雑誌以外でも前述のフィナンシャル・タイムズの「Op-ed」(Opposite the editorial page=社説の対向面に掲載される社外著名人による署名意見欄)は、日に3~4人の有識者の見解が短くまとめてあり、テーマにかかわらず目を通すようにしています。日経新聞の「経済教室」のようなものです。

目利きとしての編集者を案内人、推薦人として良質な意見や分析に出合い、自分の仕事に生かす作業をしていることになるでしょうか。かつて愛読していた雑誌でも、編集方針の変更や劣化を感じて購買をやめたものもあります。

とはいえ、信頼しているエコノミストやジャーナリストがいないわけではありません。たとえば、『フラット化する世界』の著者として知られニューヨーク・タイムズ紙に寄稿しているトーマス・フリードマンや、同紙の論説委員であるニコラス・クリストフ。単なる評論ではなく、世界各地を自分で歩き、現場の出来事や道端の人々の声をわかりやすい言葉で伝えており、経済初心者にも面白く読めるはずです。

日本人では、「プレジデント」でもおなじみの大前研一さんや竹中平蔵さん、そして野口悠紀雄さんや植田和男さんといった方々でしょうか。野口さんや竹中さん、植田さんに共通しているのは、論理的な根拠が非常にしっかりしている点。大前さんは幅広い知識と豊富な経験の持ち主で、ミクロ的な部分を理解したうえで、マクロ的な結論を引き出しています。私が大切にしている「情報のつなぎ方」に大変優れている人だと思います。

基本的なセオリーを理解したうえで、現場にも強い。そんな専門家による論考がふだん立ち寄っている場所で見つかれば、必ず目を通すことになります。基本は「場所」ですが、正しい場所と信頼すべき人々とが交錯したとき、なおさら、そこに書かれた内容は私にとって必読のものとなるのです。