1次情報ではなく、受け手側に「価値」を付与しつつ情報配信できる教祖のごとき存在が、今、注目の「キュレーター」だ。各分野の第一線を走る識者たちは、普段、誰の情報を頼りにしているのか。一挙公開する。

投資セレブの話より数倍頼れる、実務家の「趣味」サイト

マネージャーナリスト 
有山典子氏

一口でマネーといっても、記事として扱う範囲は家計の節約からマクロ経済まで幅広い。すべてに精通するのが理想だけれど、乏しい頭脳ではそうもいかないので、情報収集は「広く浅く、少しだけ敏感に」が基本だ。詳しい分析は専門家の英知を借りて、読者にできるだけわかりやすく伝えるのが私たちの仕事と考えている。

マネー記事の読者層は20代主婦から年金世代までさまざまだ。記事の対象となる人が今、どんな内容を求めているかを探るための幅広い情報集めは常に必要である。また、専門家の解説は難解なことが多いので、どうすればわかりやすく伝えられるかがキモ。専門用語をおきかえたり、説明を図解したり、背景をグラフで説明したりするための情報とデータが必要になる。

データ集めには、ずっと苦労している。そこで出合ったのが「社会実情データ図録」。専門家が運営するサイトだけに、グラフのつくりが素晴らしいうえに、公的機関を中心とする由緒正しいデータが使われ、出所も明記されている。ネット上で「これは!」というデータを見つけても、出所が不明確だったり集め方に疑問があれば、雑誌などには使えない。その点、このサイトなら、ゆっくりグラフを鑑賞してから出所をあたり、最新データまでゲットしたうえでオリジナルのグラフをつくることができる。作者の方には少し申し訳ない気がするけれど。

これ以外にも、個人の方が運営するデータサイトはよく利用させてもらっているが、リンク集がただ並んでいるより、要約がついているなど一工夫あるものが使いやすい。「個人向け社債ウォッチ!」「百貨店友の会比較」といった個性的なジャンルのサイトも便利。もちろん、使うときには元のデータを確認し、最新のものを利用する。

個人投資家のサイトはあまり見ない。全部とは言わないが、他人への誹謗が書かれていたり、自作DVDの購入を勧めるようなものも多く、参考になるとは言いがたいからだ。そんな中でも、最近は水瀬ケンイチさんのように真摯に長期投資に取り組む方のサイトも増えており、注目している。

大震災のような有事の後は、社会もマネーの動きも不安定になりがちだ。その後の相場や経済情勢がどうなるか考えるためには、専門家の意見を聞きたくなる。「あの人はどう考えているんだろう?」と思ったときに読むのは、山崎元さんなど、不動のスタンスで事実を言ってくれる方々のブログだ。

内容はマネーに関するものだけではないが、人気社会派ブロガー・ちきりんさんの鋭い視点には、いつもハッとさせられる。ネットでは匿名の人でも、内容が優れていれば多くの読者を得ることができる。出版に携わる者としては考えさせられるところだ。