米国株は2025年のどこかで大きく調整する可能性……

2016年と違うのは閣僚人事です。前回は共和党の伝統的な人事に依存しなければならない面がありましたが、今回は思想的にトランプ氏に近い人で固めています。そのため、多くの人が「馬鹿げたことだ」と思っている発言でも、実現してしまう可能性があります。

一方で「政府効率化省」のトップに指名されているイーロン・マスク氏は「国家予算を2兆ドル削減する」などと発言しています。それを実現するには、公務員を大量に解雇しなければなりません。政府予算の削減にはなるかもしれませんが、実際にそんなことを実行すれば、アメリカの景気が相当に悪くなることは目に見えています。

トランプ氏がどこまで本気で政策を実現していくかわかりませんが、「トランプリスク」についてはあらかじめ覚悟しておく必要があります。とくに米国の株式市場は上昇が続いて、すでに割高になっていますから、今年のどこかで大きく調整する可能性が高いと思います。

リーマンショックのような暴落はない

とはいえ、リーマンショックのような暴落があるかといえば、そこまでの危機が顕在化するような材料は現時点では見当たりません。

多くの人はリーマンショックが突然起きたと思っています。しかし、1、2年前から不動産ローンの焦げ付きなどが起きていたのです。そうした材料が積み上がって金融危機につながりました。

リーマンショックのときのようなリスク要因は、いまのところ見当たりませんが、マグニフィセントセブン(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ)を中心とした「テックバブル」が弾ける可能性は十分あります。

【図表1】ITバブル崩壊とリーマンショック

それでも、リーマンショックのように暴落する形にはならないでしょう。仮に弾けるとすれば、2000年代初頭のITバブル崩壊時のようにじわじわと株価を下げていき、後から考えると、「あのときが天井だった」という形になる可能性が高いと考えます。

その意味では過度に心配する必要はなく、値動きに一喜一憂せずに中長期視点で資産運用を続けていくのがいいと思います。株式の個別銘柄に投資している人であれば、今年は安くて質の高い銘柄を買うのが1つの投資戦略になるでしょう。