保健室受験で合格を勝ち取る子は意外といる

それでも毎年必ず、受験当日に体調を崩し保健室受験をする子がいる。親としては、「最悪な事態になってしまった……」と悲観しがちだが、そうとも言い切れない。実はこれまで、私の教え子の中にも当日体調を崩して、泣く泣く保健室受験をした子が何人もいるが、意外にも合格率が高いからだ。もちろん、もともと合格レベルに達するだけの学力があった子もいる。

だが一方で、合否は五分五分と見ていた子が、合格を勝ち取るケースが多いのだ。もしかすると「周りに人がいないから落ち着いて問題が解けた」「少し熱があって頭がぼーっとしている状態だったから、かえって緊張を感じずに済んだ」ことなどが影響しているのかもしれない。本当の理由は分からないが、悪いことばかりではない。そう思って、親がドンと構えているほうが、結果的にはうまくいく。

ただ、市販薬を飲ませるのは避けてほしい。市販の風邪薬にはほとんど眠くなる成分が入っている。ちゃんと病院で診察してもらい、入試本番が近いことを告げて適切な薬を処方してもらおう。

子供の肩に手を置く母親
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直前期は得意分野を中心に学習し自信をつける

身体の疲労や体調不良は、とにかく休むことが回復につながる。では、心の不調はどうしたらいいのか――?

直前期の親の悩みとして最も多いのが、「子供がいまひとつやる気を見せてくれない」「集中力が続かない」といったケースだ。ただ、これは親の目からはそう見えるだけということも多い。どんなに幼い子でも、入試本番を間近に控えた今は、さすがに気が張っている。頑張らなくてはいけないことくらいみんな分かっているのだ。しかし、義務感はあっても、まだ成長の発達途中にいる小学生は集中力が続かない。その姿を見て、「やる気がない」と判断してしまう親が多い。そして、もっと頑張らせようとあれこれ発破をかける。それが子供にとってはプレッシャーになり、「できない自分」に自己嫌悪を抱きやすくなる。

だが、この時期に最も大事なのは「自信」だ。直前期は「まだこれもできていない」「あれもできていない」とできていないところが気になるものだが、今ここで苦手分野を克服させるのは遅すぎる。できないことに時間を費やすよりも、できていることを確認し、自信を持たせる方がいい。過去問であれば前半の基礎問題だけをやらせて、「ここはもうできているから大丈夫!」とできているところを積極的に伝えてあげてほしい。中学受験で満点を取って合格する子はまずいない。合格最低点に到達さえすればいいのだ。それはすなわち、その子にとって解けるはずの問題さえ落とさなければ合格の可能性は十分にあるということだ。