「透明性」は担保されているのか

また、返信には「なお、運営委員会は、委員間で自由闊達な意見交換を行い、適切な意思決定を図る場としております。その性質上、詳細な日時や議事録等は非公開とさせていただいております」とも書かれていたが、この点にも違和感を覚えた。

開催日時すらも非公開なのだとすれば、運営委員会が実際に開催されているのかどうかも、外部からはわからない。これでは「完全な秘密会議」と言わざるをえない。JFCは「ファクトチェック」という、本来なら極めて高い倫理性と真摯しんしな姿勢が求められる活動を行うはずの組織だが、これでいいのだろうか。自ら掲げる「透明性」の大義はどこへ行ったのか。

フェイクニュースの文字が並ぶ中にある「ファクト」の文字を拡大鏡が強調
写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです

こうしたJFCの姿勢をIFCNの姿勢と比べながら、なぜファクトチェック団体が、プラットフォームと適切な距離を保つべきなのかについて、さらに論じてみよう。

IFCNは「YouTubeへの公開質問状から2年経つが状況は良くなっていない」という趣旨の続報記事も出している。そのなかでも、下記の指摘は重要だ。

巨大テック企業のアルゴリズムは、ファクトチェッカーによる検証記事よりも、虚偽情報の作り手によるコンテンツの方を優先して表示しがちだ。

ファクトチェッカーには巨大テックカンパニーからの資金が必要だ。しかし、そもそも資金がいる理由の一つは、テックカンパニーが問題をどんどん深刻にしてしまっているからだ。

実際、Googleを運営するAlphabet社が公表した2023年度第4四半期の会計資料によると、Googleは3000億ドル以上を売り上げ、その純利益は738億ドルに及んでいる。それに比べれば、IFCNへの寄付(1300万ドル)は微々たるものだ。

ファクトチェック団体としての適性があるのか

そもそも、誤情報・偽情報が減れば、ユーザーだけでなくプラットフォーム自身にも得だ。誤情報・偽情報が多すぎるプラットフォームは、最終的にユーザーにも見放される。海外のファクトチェック団体が多額の寄付をもらっても遠慮しないのは、この事実を十分に理解しているからだろう。

ただ、Googleがファクトチェック団体にカネを出しても問題ないと言えるのは、ファクトチェック団体側が自主・独立を保ち、スポンサーへの過剰な配慮をしない場合のみだ。

仮に、Google側がファクトチェック団体を意のままに操ったり、逆にファクトチェック団体側が過剰におもねったりするようなことがあれば、全ての前提が崩れてしまう。