独自資金での運営はほぼ不可能

読者の中には、そもそもGoogleからカネを受け取らなければ良いのに、と考える人もいるだろう。しかし、ファクトチェックの専門団体は、世界的に見ても非常に厳しい財政状況にある。

2023年のIFCNの報告書によると、国際的なファクトチェック団体はどこも人手不足だ。常勤スタッフの数は1〜5人の組織が最多で、続いて6〜10人と小規模になっている。それよりも深刻なのが活動資金で、80%以上の団体が「最大の問題は資金不足だ」と訴えている。IFCN所属団体の資金源のうち最大のものは、Metaが設立した基金からの寄付だという。

JFCは年間100本以上のニュースを公開し、Yahooなどの大手サイトへも配信している。しかし、2023〜24年の報告書などによると、1354万円の人件費をかけて、ニュース配信の収入はわずか79万円だった。営利目的のメディアとして成立しないのは一目瞭然だろう。

日本にはIFCN加盟のファクトチェック団体が3つだけで、JFCのほか「InFact」と「リトマス」しかないのは、そういった資金面での厳しさの表れでもあるだろう。

誤情報が蔓延しているからこそ、冷静な検証が必要

ここまでGoogleやXなどのプラットフォームや、JFCのファクトチェック団体としての問題を論じてきたが、偽・誤情報をめぐる事態がここまで深刻なら、いっそ国家やプラットフォームが直接介入して取り締まればいいと考える人もいるかもしれない。

しかし、そうしたアプローチは非常に危険だと筆者は考えている。国家はもちろん、国家に準ずるような権力を持つ超巨大プラットフォームに軽々しく「お墨付き」を与えれば、民主主義を維持していくうえで不可欠な、表現の自由の侵害になりかねないからだ。

黒いブロックで、FAKEの文字。末尾2字はCTに切り替わると、ファクトになる
写真=iStock.com/Lemon_tm
※写真はイメージです

国家やプラットフォームなどの強大な権力から独立した形で活動するファクトチェック団体が必要とされている理由は、まさにそこにある。

価値のある情報と誤情報が混然となったインターネットは、民主主義に対する大きな脅威となっている。そんな状況になってしまった今だからこそ、JFCをはじめとするファクトチェック団体には、冷静な検証活動を続けていってほしい。