Googleとの関係性は本当に中立なのか
JFCの「解説」記事では、マスメディアを批判する一方で、誤情報拡散に対するYouTubeやGoogleの責任は一切語られていない。Googleとマスメディアの間には競合関係があり、OECDの報告によるとGoogleなどのプラットフォーム側が圧倒的に優位な立ち位置にいる。
つまり、JFCはGoogleから多額の資金をもらって、Googleが利害関係者である誤情報の問題について、中立を装って、YouTubeやSNSの影響力拡大やマスメディアの凋落を強調するオピニオン記事を書いているように見える。
これは、ジャーナリズムの倫理にも反するのではないか?
たとえば、海外の有名ファクトチェックメディア「Politifact」はMeta社から資金提供を受けているが、Facebook投稿の検証過程でMeta社のシステムを使っただけでも、毎回次のような断り書きを入れている。
先のJFCの記事で筆者が論評している対象は、テレビ局といい、インフルエンサーといい、Googleと利害関係がある人たちばかりだ。そして、GoogleとJFCとの関係性を念頭に置いて記事を読んでいくと、メディアを批判する一方で、YouTubeの番組やインフルエンサーには「甘い」姿勢が見えてくる。
デマを拡散する人物を説明なしで紹介
たとえば、YouTubeなどのプラットフォーム上で活躍するインフルエンサーについては、解説記事の後編に次のような一文がある。
ここで紹介されているポッドキャストの配信者であるジョー・ローガン氏は、YouTubeのチャンネルに1870万人の登録者がいるほどの人気コメディアンだが、同時にCNNやBBC、NewYork Times、AP通信、Newsweek、AFP通信など、数多くのメディアからファクトチェックの対象とされている要注意人物でもある。
JFCの記事は、ローガン氏を紹介する際、こうした注意点に一切触れていない。数多くのメディアから発言の信憑性を疑われている人物の番組を「有力ポッドキャスト」とだけ説明するのは、ファクトチェック団体として不適正だと言わざるを得ない。
こうした「解説」記事やファクトチェック記事は、IFCNの倫理憲章(和訳)や、JFCのガイドラインや指針と照らしても問題があると思われる。
IFCN倫理憲章の「非党派性と公正性」には、「私たちは、ファクトチェックの対象とする問題について、特定の政策的立場に立ったり擁護したりすることはしません」とある。また、「資金源と組織の透明性」の項目では、「他の組織から資金を受け入れても、資金拠出者がファクトチェックの調査で達した結論に対して全く影響を与えないことを確約します」とうたっている。
Googleからの資金提供を前提にすると、これらの記事内容には、「非党派性と公正性」「資金源と組織の透明性」に課題があると言わざる得ないだろう。