プラットフォームの問題点をほとんど指摘していない
また、冒頭でも指摘したように、FacebookやXなどの有力プラットフォームはフェイクニュースの拡散源となっているが、JFCはこれらの問題点にほとんど触れていない。
JFCは2024年11月までに「ファクトチェック記事」以外に解説記事22本、ファクトチェック講座記事20本、メディアリテラシー講座記事5本を出していた。すべてをチェックしたが、そのうちプラットフォームの責任論が語られていたのは1本だけで、その記事はPoynterの記事を和訳したものだった。
たとえば、さきほどの解説記事では、YouTubeなどのプラットフォームについて「自分では選べない情報洪水の中で、アルゴリズムが適切に情報を取捨選択してくれる」などと利便性を強調する一方で、運営者の責任を語っていない。
解説記事の前編では「情報洪水の中でアルゴリズムが情報を取捨選択(便利)」「プラットフォームが便利だからこそ人・情報が集まる」と、1つの図で「便利」という言葉が2回も使われている。
YouTubeやTikTokなどの動画配信サイトが、アルゴリズムによって情報を取捨選択しユーザーに届けていることを説明した図。「便利」というワードが二度も登場する。
収入源のほとんどがプラットフォームからの助成金
JFCがこうした主張記事を出すことには、大きな問題があると筆者は考えている。なぜなら、JFCが公開している「JFCへの支援と会計」によると、運営費の99%はGoogleなどのプラットフォーム企業が出しているからだ。内訳は、Googleから7367万円、LINEヤフーから500万円、Metaから400万円となっており、Googleからの助成金は8割以上を占めている。
古田編集長自身も2020年から2022年までGoogle News Labのティーチングフェローを務めていた。そして、YouTubeはGoogleの動画プラットフォームである。
つまり、JFCや古田氏は、この問題について「第三者」というより、当事者に極めて近い立場なのである。資金源についての情報はJFCのサイト上を探せば見つかるが、記事中にはそうした注意書きがまったくない。解説記事を読んだ人が、いちいちJFCの収支報告を調べるとは考えにくい。
JFCは自らのガイドラインでも「非党派性」や「透明性」を打ち出している。JFCの監査委員長である東京大学大学院教授の宍戸常寿氏に対するインタビュー記事によると、JFCは2022年にGoogleから150万ドル(2億1700万円)の運営資金を得て、ネット関連事業者でつくる一般社団法人・日本セーファーインターネット協会(SIA)の一部門として立ち上げられた組織だ。
しかし、後述するがJFCに問い合わせたところ、編集部をチェックするという運営委員会は完全非公開であり、2024年8月に公開されたさきほどのインタビュー記事によると、監査委員会は発足後からその時点まで、過去一度も開催されたことがなかったという。このような状況では、「非党派性」や「透明性」という言葉も疑わざるを得ない。