自分らしさの「光る君へ」

各番組に関して細かく見ていこう。

個人視聴率が1割強下落した「光る君へ」(吉高由里子主演)は、男女年層別では、F4(女性65歳以上)を除く男女全層で下落(前作比較、以下同)となった。また特定層別視聴率でも、大半の層で苦戦したと言わざるを得ない。

【図表】「光る君へ」と「どうする家康」の視聴率比較
スイッチメディア「TVAL」データから作成

ただし例外となる層があった。「自分らしさを自分らしく表現する」を重視する20~40代の女性だ。

物語は紫式部が主人公。世界最古の女性文学といわれる『源氏物語』を執筆した人物だ。当時の一般的な女性とは異なり、「私は私らしく、自分が生まれてきた意味を探してまいります」と、大好きだった藤原道長(柄本佑)からの「妾」の誘いも断っている。

1000年も前に人間とは何かにこだわった紫式部。安易に周囲に迎合しない生き方が、若い女性を中心に多くの「自分らしさ」を重視する人々に深く刺さったようだ。

こだわりの「虎に翼」

「光る君へ」とグラフの形が一見似ているが、実はまったく対照的だったのが朝ドラの「虎に翼」の寅子(伊藤沙莉)だ。

【図表】「虎に翼」と「らんまん」の視聴率比較
スイッチメディア「TVAL」データから作成

「光る君へ」を好んで見ていた「自分らしさ」重視の若い女性は、この作品はあまり見なかった。

代わりに「こだわり」が強い人々には大いに関心を持たれた。「光る君へ」が女性の内面に向かった物語だとすると、「虎に翼」は女性をめぐる社会を問うたドラマだったのが影響したのか。

主人公の口癖は「はて?」。安易に相手や周囲に妥協せず、自ら納得するまで問い続ける姿勢は、紫式部に似ているが、本作は「こだわり」の強い人々が魅せられたのである。