人間が生き抜くために欠かせない感情

生きている以上、人間である以上、全く不安が無くなることはない。

なぜなら「不安」は、私たち人の祖先が生きるために発達させた、貴重な感情だからだ。

「不安」の起源は、太古の昔、石器時代にまで遡る。その時代、私たちの祖先は常に命の危険にさらされていた。いつ大型肉食動物に襲われるか、いつ気候が急変するか、いつケガや病気を負って命を落とすか分からない。

現代のようにクマが出たからといって、110番すれば警察や猟友会の方が駆けつけてくれるわけではい。クマに襲われて大怪我をしたからといって、119番すれば救急車が来てくれるわけではない。自分で自分を、家族を守らなければならなかった。

生き抜くためには自分の状態や周囲の環境を常に観察し、そこに起こるささいな変化や小さな違和感に気づき、それが危険かどうかを見極めて行動する必要があった。そのために発達し、大きな役割を果たしたのが「不安」という感情だ。

「不安」を感じた後、何をするか

不安を感じるからこそ、起こりうる危険を予測し、警戒し、慎重に行動できるようになった。不安を感じるからこそ、まだ起こっていない危機に備えることができるようになった。つまり「だいじょうぶ! 余裕! 全然OK!」と悠長に構えているよりも、ちょっとした物音にでも不安になるくらいのほうが、生存競争において有利だったのである。

また、強烈な不安を感じるからこそ、その不安を取り除くために、不安の原因と真正面から向き合う必要があった。必死で考え、試行錯誤し、仲間と助け合い、懸命に働き、さまざまな道具や技能を発明開発してきた。不安こそが厳しい自然界を生き抜くための最強の武器だったのだ。

問題は「不安」という感情にあるのではない。「不安」を感じた後の行動にある。

では、どのように行動したら良いのだろうか。「不安」の乗り越え方について、お釈迦さまは次のような明確な教えを残しておられる。