「入浴によってかえってアルコール分解が遅くなる」

また、中山さんはお酒とパーティーが大好きだったようで、高級レストランで芸能人や経営者などセレブが集まったパーティーに参加する姿は過去に何度も報道されている。6日の浴槽内死亡も飲酒が関係している可能性は高そうだ。

「飲み過ぎたからお風呂に入ってアルコール分を早く抜く」などは日常生活でよく聞くセリフだが、医学的には「入浴によってアルコール分解が遅くなる」ことが知られている。

入浴することで全身の血流はよくなるが、肝臓への血流が相対的に減るため、アルコール分解が遅れるからである。その他「浴槽で寝込んでしまいそのまま溺れる」「酩酊状態で足元がふらついて転倒」などのリスクも高い。飲酒後の入浴はリスクが高く、特に中山さんのような一人暮らしの中高年にはお勧めできない。

どうしても「飲酒後だけど体を洗いたい」などの場合には、シャワーか「ぬる湯に短時間」の「烏の行水」をお勧めしたい。

交通事故より多い浴室内死亡

政府統計ポータルサイトによれば、家庭内の事故死は年間約1万6000件と報告され、そのうちの死因トップが浴槽内溺死(約6000件)、次いで誤嚥(2500件)である(2022年データ)。同年の交通事故死2610人(警察庁データ)に比べて倍以上となっている。

少子高齢化を反映しているのか、交通事故死が減少傾向であるのとは裏腹に、浴室内死亡は増加傾向にある。「浴室内死亡は交通事故の3倍」と呼ばれる日も遠くなさそうだ。

お湯を張っている浴槽
写真=iStock.com/swalls
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また、浴室内死亡は11~4月に多いことが知られており、前述のヒートショックとの関連が指摘されている。また、男性に多いことも知られている。

予防法としては、「かけ湯をして体を慣らしてから入浴」「ぬる湯に10分以内」「飲酒後の入浴は避ける」「更衣室を温めて温度差を減らす」「手すりなどを整備して、ゆっくり動く」「同居家族に声をかけてから入浴」などが挙げられるが、特に前3案は今夜からでも導入できるので、50代以上の世代が冬期に入浴する際には心がけておきたい。