脱水×入浴は本当にヤバい
近年のサウナの流行にともない「サ活」「サウナでととのう」というフレーズを目にすることが増えている。「ととのう」とは「サウナと水風呂を交互に繰り返し、副交感神経と交感神経を交互に活性化させることで気分がスッキリする」状態を指すと言われるが、医学的には好ましいとは言えない。
特に心臓へのリスクは大きい。2023年には自然派をアピールしたサウナ施設で、サウナ脇の池で25歳男性が死亡する事故があったが、交代浴による心臓への負荷が関係した可能性もあっただろう。
また、ビール愛好家の中には「湯上り後のビールを美味しくするために、水分補給せず入浴やらサウナに入って、あえて脱水状態になる」タイプが存在するが、これも浴室内死亡リスクを考えたらお勧めできない。中年以降の入浴では、こういうチャレンジャー的な行為は卒業し、十分な水分補給の後に入浴すべきである。特に一人暮らしでは厳禁である。
隠れ心臓病、気になる人は心電図搭載スマートウォッチを
「私は毎年の健康診断で心電図はチェックしているけど異常と言われたことはない」
「だから私はサ活も大丈夫」
そう安心している人もいるかもしれない。しかし、一般的な健康診断の心電図は昼間の安静時に20秒程度の波形しか補足しておらず、「寝ている間」「走った直後」などに出現する異常波形は発見しにくい。
また、発作時の波形を記録していない状態で「胸がドキドキするんです」と内科を受診しても、医師が不整脈だと診断することはとても難しい。また、医療ドラマなどで描かれる狭心症は「胸を押さえて苦しがる」演技がほとんどだが、現実の狭心症の患者さんは「脇がザワザワする」「歯が痛い」「胃が痛い」などと訴えることも少なくはない。
そして中年以降には、病院で診断はされていないけど隠れた心臓病を持つ人はそれなりに存在している。中山さんも、このような“隠れ心臓病”だったのかもしれない。
Apple WatchやSamsung社Galaxy Watchなど現在のスマートウォッチでは心電図が内蔵されているタイプがある。医療機器としては正式には認可されていないが、不整脈の診断機能もあり、寝ている間も連続的に測定することが可能である。ノーブランド品でよければ、1万円以下で心電図が測定できるスマートウォッチも販売されている。
「家系に心臓疾患が多い」「糖尿病がある」「血圧が高め」「最近、走るのがつらい」など、「自分は心臓病のリスクが高そう」と思う中高年は、普段から心電図搭載スマートウォッチを利用して24時間心電図や脈拍数や血圧などをチェックしておき、異常な数値が出た時には、そのデータを持って循環器内科を受診することをお勧めする。
スマートウォッチの多くは防水性能があるので、入浴中の心臓発作が心配な人は、入浴中も装着し、心電図などをモニターするのも良いかもしれない。入浴中に体調に異変を感じたらスマートウォッチで人を呼ぶこともできる。
最近では「スマートウォッチ外来」と称して、スマートウォッチのデータを積極的に活用している病院が増えている(添付画像参照、河北総合病院=東京・杉並区のもの)。ネット検索すれば簡単に見つけられるので、心臓リスクの心配な中高年ならばチェックしておきたい。