鉄板の持ちネタである、あのシャクレた長いあごは今も健在。コミックバンド「ザ・ハンダース」や、桜金造とのお笑いコンビ「あご&きんぞう」などでお茶の間の人気者になった、あご勇さん(67)はバセドウ病の持病を持ながらも、7年前から新しい仕事を始め“観客”に大ウケだという。その現場をフリーランスライターの東野りかさんが取材した――。
私をあごで使ってください〜でつかみはOK
あご勇――昭和50年代「ザ・ハンダース」というコミックバンドで一世風靡したメンバーの一人を覚えているだろうか? 鉄板の持ちネタにもしているシャクレた長いあご、とても大きな目は相変わらずだ。
そのあご勇(以下あご)さんが現在67歳。「vipツアー」(主催:平成エンタープライズ)という日帰りバスツアーの添乗員をしていると聞き、同乗取材することに。取材当日の午前11時、バスにお客さんたちが乗り込むと、あごさんがまずはバス最前列に立って挨拶。
「本日のツアーの添乗員のあご勇でございます」とマスクを取って顔を出した瞬間、きゃーという歓声が起きた。
「今日は一日、いい意味で私を“あご”で使ってください〜」と続けると、バス内の空気はどかーんと盛り上がった。
福島からやってきたという女性一人客は、
「こんな有名人の方に会えるとは、感激です!」と笑顔になるし、
福岡からやってきた4人組女性は、
「なんだかあごさんに似ているなとは思ったけど、まさかご本人だとは思わなかった。本当にラッキー!」
とみな興奮気味だ。トイレ休憩で立ち寄ったサービスエリア、立ち寄りスポットでは、あごさんと参加者の撮影大会になる。
「今日のお客様はご年配の方が大半で、私を知ってる方が多いので添乗もやりやすいです」と、つかみは上々のようだ。
しかし、いつもそういうわけではない。若い世代はそもそも彼を知らないし、知っていたとしても興味がない、または嫌いな人だっている。そんな時は、
「最初はアウェー感が強いんですよ。でも一生懸命に仕事したり、笑いを提供したりすると、徐々に打ち解けて、バスの中の雰囲気が良くなっていくんです」とあごさんは言う。