飲み会は「舞台」であり、会話には「台本」が存在する
仕事の緊張感から少し離れ、お客様と他愛もない会話を楽しむ。こうしてお互いに心を開いて打ち解けるのも飲み会の大切な目的です。
しかし、結果を出す人は、「とりとめもない会話をして楽しく過ごせれば十分」とは考えません。飲み会は「舞台」ですから、言うべきセリフまで用意してから本番に臨んでいます。
たとえば、広告を出してくれる可能性のあるクライアントを飲み会に誘ったとします。こちらのメンバーは、編集長である私とクライアントを連れてきた広告営業の担当者。クライアントは、雑誌に広告を出すか迷っています。
このような状況のとき、私は広告営業の担当者と次のようなやりとりをします。
【戸賀】「(お客様のご予算ですと)2ページを使って商品を紹介しましょうか」
【営業】「ちょっと待ってください。編集長は2ページと申しておりますが、私のほうで編集長を口説いて3ページにさせます」
【戸賀】「おい、ちょっと勝手なことを言うな!」
【営業】「編集長、あとで相談に乗ってください」
「この広告予算では2ページしかとれない」と言う私を、身内である営業担当が「なんとか3ページにならないか」と説得している構図です。
勝手なことを言う営業担当に対して、私は少し慌てた様子で「勝手なことを言うな!」と怒ったりもします。すると、飲み会の席には少し緊張が走り、クライアントの中には、逆に「まあまあ」と仲介に入ってくださる方もいます。
しかし、これらはすべて営業担当と事前に打ち合わせ済みの会話です。「俺がこう言ったら、こう言い返せ」「ここのセリフは大事だから、少し大きな声で強調しろ」と、ちょっとした“演技指導”もします。
つまり、飲み会は「舞台」であり、会話には「台本」が存在しているのです。
駆け引きをするならドラマチックに!
こうしたやりとりを見せられたクライアントは、どう思うでしょうか。
多くの人は、広告営業の担当者に対して「この営業担当は、私たち(クライアント)のために編集長に怒られるのを承知で説得してくれている。仕事熱心な人だ」といった好印象を抱くはずです。
そして翌朝、広告営業の担当者からお礼のメールが届き、「ページ数の件で戸賀には怒られていませんのでご心配なさらないでください。ぜひ3ページでやりましょう」と書いてある。
しかも、CCには編集長の私も入っているので、現実味のある話だと暗に示しています。ここまでやれば、ほとんどのクライアントは前向きに広告を出稿しようと考えてくれるでしょう。
会議室でこんな芝居を打ったら不自然ですが、お酒の席では、このくらい芝居がかっていても案外平気ですし、かえってドラマチックに映ります。
「ここまでしないといけないのか!」と思う人もいるかもしれません。たしかに、多少極端な例かもしれませんが、飲み会は、結果につながらなければ意味がありません。
しかも、どんなビジネスでも多かれ少なかれ交渉の駆け引きはあるはず。どうせ駆け引きをするなら、戦略的に飲み会の場を使うべきではないでしょうか。