これくらい書けないと慶應医学部は受かりません
【慶應義塾大の出題の模範解答例】
科学者は現象を分析し、一連の理論を構築するために、正確かつ緻密な頭脳を要する。その意味で科学者は確かに頭が良くなければならない。一方、常識的にわかりきった事象に対し、何かしら疑問を持ち、苦心しつつ探究する姿勢が求められる。時に盲目的に自分の興味の対象に没頭する。そういう意味では、科学者は頭が悪くなければならない。
ここで、医師という職業について考えてみたい。医師は、人体の仕組みや疾病、創傷などの原因や治療法、さらに予防法について、医学という科学で分析するという科学者の側面を持つ。医学の未知の領域は宇宙よりも広いともいわれ、また、発症の過程や症状など、さらには命とか生活といった側面は患者一人一人異なる。
医学研究の分野はもちろん、臨床においても、正確かつ緻密な頭脳は必要だ。症状や検査の結果で仮説にあたる鑑別診断を行い、さらに必要な検査をして検証し、最終的に確定診断に至る。
しかし、その道筋には多くのささいな事象が隠れている。至るべき疾患の診断とは関係ないものも数多くあるはずだ。診断という結論に至るためには無駄がなく、迅速な方法が求められることは当然ではあるが、もしかしたら重篤な疾患に至る小さな芽を見過ごしているかもしれない。
さらに、患者という人間を見る以上、親身になって対応することもある。そこに利益や効率といった概念は相いれない。頭が良いだけでは患者に寄り添うことはできない。時には馬鹿になって患者のために尽くすこともあるだろう。つまり、頭が良くなくてはならないと同時に頭が悪くなくてはならない職業でもあるのだと私は考える。