(1)品ごとにナンバーワンの仕入れ量を確保する。「“だしじゃこ”No.1」は、そのことの端的な表現だ。単品ベースで業界No.1の仕入れ量を確保することで、他の小売店・企業より優位なコスト上の立場を確保できる。当然のことだが、全体として大量に仕入れていても、店ごとにバラバラに仕入れをやっていては、その立場を得ることはできない。「本部での一括集中体制」をとる必要がある。
(2)その本部仕入れ部門は、店での販売とは組織上切り離される。「仕入れと販売の機能分離」だ。普通の小売りの場合は、販売する人が責任を持って仕入れをする。町の魚屋さんなら、朝、卸売市場へ行って鮮魚を仕入れるとき、店でそれを買う顧客の顔を思い浮かべることができないといけない。だが、チェーン店の場合は違う。仕入れ担当は、できる限り大量の商品をまとめて仕入れて、供給業者からの仕入れコストを最小化することが課題になる。そこで得られたコスト上の優位性を、店での価格優位につなげるわけだ。
(3)仕入れのコスト優位を確保するために、組織は、商品部中心の縦割り型組織をとる。食品、衣料、雑貨などといった商品部門ごとに縦割り組織が編成される。商品部門は、各店に並べる商品の構成を決める。極端になると、店は、低価格商品を陳列する倉庫と見なされることになる。
こうした理論が、わが国のチェーンの導入・発展期に業界を席巻した。今は亡き渥美俊一氏や佐藤肇氏は、その理論を教導した。ダイエーに在籍された方の話によれば、渥美氏は、あるとき、ダイエーの社員に向かって、「ダイエーは、私が言うとおりにやったから、今があるんだ」と言ったという。だが、ダイエー創業者の中内功氏もそのあと、それを切り返して、「渥美さんは、私がやってきたことを理屈に仕立てあげている」と言ったという。お2人の親しい関係を偲ばせる逸話だが、この当時まさに、理論が実践を支え、実践が理論を支える、好循環が働いていた様子をうかがい知ることができる。