地域への適応を重視することになれば、自然、その店の商圏は小さいものとなる。商圏の中で、複数の店が重なり合うように、まさに鎖のように連鎖して出店することになる。地域集中出店方式と呼ばれるやり方だ。チェーン(連鎖)の経済性は、仕入れ局面ではなく、市場局面に求められる。翻って考えると、チェーン1.0では市場に向けての配慮はなかった。安さを武器に広い商圏から顧客を得ることが図られ、連鎖的出店ではなく、大規模な単独出店が計られた。
今、学ぶべき2つの教訓とは
この歴史から、2つのことを学びたい。
(1)「安さ」はビジネスの大事な切り口だが、唯一ではない。それは、豊かな経済であることの証拠でもある。豊かな経済では、上流で生まれた「安さ」という価値をそのまま下流に伝えるやり方ではうまくいかない。その間で、多様な価値が創発する。コンビニやスーパーマーケットなど多様なビジネスが生まれていることを見れば、そのことは了解できるだろう。
(2)実践者と理論家、両者を共に虜にするパラダイムが生まれる。両者が互いに強化しあい、共にそれに取り込まれる。
「業界の常識」とは、そうしたものだ。経営者はそのことを自覚しないといけない。自分の考えがドグマではないか、イデオロギーになっていないかを常に顧みる姿勢、プラグマティズムの精神が必要とされる所以だ。