自動車輸出、インバウンド需要が減少する恐れ
一方、わが国では実質賃金がマイナスの環境下、日銀は個人消費などに配慮して利下げを慎重に進めることになるだろう。その結果、日米の金利差は拡大し、円の下落圧力が高まることも考えられる。トランプ政権がイスラエルを重視し中東情勢が混迷すると、供給不安から原油価格が上昇するかもしれない。円安とエネルギー資源などの価格上昇でわが国の輸入物価は上昇し、個人消費は下押しされることも懸念される。
少し長い目で見ると、物価上昇、財政悪化などで米国の景気は減速し、わが国の自動車輸出、インバウンド需要が減少する展開も予想される。自動車生産の減少は、わが国の設備投資減少要因にもなる。
中長期的に、わが国の企業は米国の関税を回避するため、地産地消の体制を整備することになりそうだ。業績拡大を目指し、米国など成長期待の高い市場で得た収益を再投資する必要性も高まる。人口減少で縮小均衡が加速するわが国では、設備投資や研究開発は伸び悩むだろう。
ついに“失われた40年”へ突入するのか
1990年代以降、バブル崩壊などによりわが国の経済は“失われた30年”と呼ばれる停滞に陥った。それでも、わが国がそれなりの経済規模を維持したのは、1997年のハイブリッド自動車が世界的にヒットしたことがある。
今後、企業が国内で設備投資を積み増しづらくなると、わが国の企業が、世界の消費者が欲しいと思う高付加価値の新商品を創出するのは難しくなることが懸念される。それが現実味を帯びると、わが国の経済が“失われた40年”に向かう恐れは上昇する。米大統領選直後、国内の株価は円安観測などを材料に上昇したが、日本経済の先行きは慎重に考えたほうがよいかもしれない。