台湾侵攻があれば「関税200%」を示唆

取引の一手段として重視するのが関税だ。実現するかわからないが、トランプ氏は貿易相手国に10~20%の関税を一律でかける考えを示した。トランプ氏は関税のコストを払うのは輸出側の企業と考えているようだが、実際には、少なくとも一部の費用は米国の消費者が負担することになる。

関税引き上げで米国企業の資材調達コストは上昇し、価格転嫁から物価は上昇する可能性もある。米国の実質賃金が上昇し、減税で家計の支出意欲が高まっているのであればなおさらだ。

特に、トランプ氏は中国に対する関税を大幅に引き上げる考えを持っている。中国からの輸入に60%以上の関税を適用する意向という。中国が台湾を包囲した場合には200%に引き上げる考えも示した。

トランプ氏は、前回の政権で通商代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザー氏に次期政権で同職への復帰を求めたようだ。過去、ライトハイザー氏は対中貿易赤字を減らすため、高関税や対中投資規制の厳格化が必要との考えを示した。半導体など先端分野で、米国が対中規制や制裁を発動し米中対立が先鋭化する恐れもある。

グローバル化の「逆回転」が始まる?

今回の大統領選や議会選で、民主党の支持減少は鮮明だった。そのひとつの要因がインフレの高進だろう。バイデン政権下、2021年春から2022年6月にかけて米国のインフレは急伸した。低所得層などの生活の苦しさは高まった。それに伴い、経済格差も深刻化し、政権に対する不満が高まった。

不満を募らせた有権者は、米国第一を掲げるトランプ氏に期待を託した。トランプ次期政権は多国間の協調より、米国の利害を最優先に政策を運営するだろう。それにより、“アメリカ・ファースト”の姿勢は一段と鮮明化するはずだ。これまでの、世界経済のグローバル化は逆回転し始める可能性が高い。

1990年代以降、米国は自由貿易協定(FTA)や多国間の経済連携協定(EPA)などを推進した。国境をまたいだヒト、モノ、カネの再配分は増加した。米国の消費者は“世界の工場”の中国から安価な玩具、アパレル製品、ITデバイスなどを、わが国からは燃費性能の高い自動車などを輸入した。