インテルは3四半期連続の赤字に

2つ目は、演算を行う画像処理半導体(GPU)、高速のデータ転送を行う広帯域幅メモリー(HBM)など、AIチップの供給が需要に追いついていないことだ。GPU分野ではエヌビディア、HBMはSKハイニックス、受託生産でTSMCのシェアは拡大傾向にある。

7~9月期、スマホ、半導体の受託製造(ファウンドリー)、半導体製造を手掛けるサムスン電子は、HBM供給の遅延などで半導体事業の営業利益が前期を下回った。米国では、パソコンなどに使う中央演算装置(CPU)大手、インテルが3四半期連続で赤字だった。

Intelの社屋
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米AMDのリサ・スー最高経営責任者(CEO)は、AIチップの供給は2025年以降厳しくなるとの見通しを示した。マイクロソフトなどが自社で設計したチップ、エヌビディアのGPUなどの製造委託増加で、TSMCの先端製造ラインはフル稼働状態にあるようだ。10月下旬、TSMCの米アリゾナ第1工場の歩留まり向上に関する報道もあったが、先端チップの供給増加は一朝一夕にいかない。

オープンAIエンジニアの年収は1億4000万円

3つ目は、深刻な人材不足だ。米紙によると、オープンAIの採用対象エンジニアの給与の中央値は、株式とボーナスを含め年間92万5000ドル(約1億4000万円)に達する。メタで働くAIの専門家の場合、年間の報酬は40万ドル程度だという。

業界内で、AIの学習やハルシネーション(幻覚)対策の専門家をチームごと引き抜く一方、引き抜きに対抗し給料倍増を提示するケースも増えたと聞く。チップに加え、人材の不足もAIビジネスの収益の伸びを阻害している一因だ。

今後、世界のAI関連分野を中心に、垂直統合型から水平分業型へビジネスモデルの変革は加速するかもしれない。マイクロソフトなどのように、対個人、対企業、対政府など広範なセグメントを対象にするより、特定分野で事業を行うケースは増えると予想される。

水平分業型では、企業は比較優位性を持つ分野に集中する。他の分野では、外注や業務・資本提携を締結する。競争力の向上、キャッシュフローのミスマッチを防ぐために重要な方策といえる。AI分野の中長期的な成長と、世界経済の構造変化に対応するために重厚長大な組織より、特定の機能などに特化したほうが機動性を高めやすい。半導体の設計、開発、受託生産で加速する国際分業体制をとる企業は増える可能性は高い。