ヤフー→グーグル→オープンAIに?

分業体制の加速を象徴する変化も起きた。10月末、オープンAIは、AIが人の意図を理解して情報を探す検索サービスを開始した。同社の営利組織への事業方針の転換、生成AI関連の半導体開発などで、ヤフーからグーグルにシフトした検索シェアが、今後はAIスタートアップ企業に移りつつある兆しにも見える。

AIという文明の利器は、組織の在り方、常識を根底から覆す可能性を秘める。研究やプロジェクトごとに専門家がチームを結成する。チームはソフトウェアの研究開発を進め、その中から営利企業を目指す組織が増える。化学と製薬などの新興企業が提携を交わして新薬やワクチンを開発し、世界的なイノベーションも増えるだろう。

見方を変えれば、特定の機能を果たすハードウェアよりも、研究、分析、シミュレーションなどを可能にするソフトウェアの重要性は高まりこそすれ、低下することは考えづらい。素材、工作機械、自動車などの分野で、受託製造業へ事業運営体制の転換を目指す企業が増えることも考えられる。

当面、マイクロソフトなどは設備投資を積み増し、AI分野で成長を目指す。一方、分業体制を敷きAI分野の先行者利得を手に入れようとする新興企業も増えるはずだ。どちらがAIビジネスの収益向上を実現し、世界的なシェアを手に入れるか、注目は増えるだろう。

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