第四の問題:女性器美容整形の長期的リスク

ただし、女性器形成施術(FGCS)の長期的リスクはまだデータが不足していることは事実だ。2020年1月、米国産婦人科医会(ACOG)は、性器美容外科手術の有効性を裏付けるデータが不足していること、およびその潜在的な合併症について女性に伝えることを推奨している。

また、オーストラリア・ニュージーランド産婦人科医協会(Royal Australian and New Zealand College of Obstetricians and Gynaecologists)も、手術による不必要な被害を避けるために、医学的必要のない女性器美容整形手術(レーザー膣若返り、処女膜形成術、Gスポット増大術など)を行わないよう勧告している。

現時点で医学的に必要のない女性器美容整形手術について、長期的な満足度、安全性、合併症率を評価した研究はほとんどない。だからこそ、オーストラリア・ニュージーランド産婦人科医協会は女性器美容整形に関して次のリスクを注意喚起している。

● 離開(傷の感染/または破壊)
● 組織の除去過多による異痛症(痛みの刺激に対する組織の感度上昇)
● 神経損傷による性器感覚の低下
● 永続的な色調変化(炎症後色素沈着または色素減少)
● 潤滑の低下
● 性交疼痛症(性交時の痛み)
● 癒着および瘢痕
● 外陰部に影響を及ぼす皮膚疾患
● 大陰唇の傷跡と変形
● 尿失禁を含む尿路症状
● 骨盤底機能障害
● 腫れ、あざ、出血、痛み

●分娩時の合併症、経膣分娩時の瘢痕組織の裂傷など

●患者本人またはパートナーの期待に沿わない美容上の結果

●心理的な苦痛

女性器形成はグローバルトレンド

ところが、以上のような日本の状況は他の先進国と比べると決して特異なものとは言えない。

国際性器美容外科・性科学会(International Society of Aesthetic Genital Surgery and Sexology)によると、アメリカでは、2012年から2017年の5年間に陰唇形成術(5年以内)が2倍以上増加しているという。また、アメリカ美容外科学会(ASAPS)の調査では美容整形医の26%が女性器の形成も行っており、需要は年々膨らんでいると推測されている。

国際美容外科学会(ISAPS)が2017年に発表した調査では、106カ国合計で小陰唇縮小術の施術件数は45%増加したという。そのトップ10はブラジル、アメリカ、ロシア、スペイン、ドイツ、トルコ、コロンビア、フランス、メキシコとインド。まさに宗教や文化を超えたグローバルなトレンドなのだ。

一部の医師が女性器形成に転向する背景には、経済的な事情や中絶件数の減少など複雑な要因が絡んでいる。彼らが診療の継続やスタッフの雇用を守るために美容整形へ舵を切るのは、現実的な選択肢として理解できる側面もある。

しかし、女性器に押し付けられる非現実的な美の基準や、その結果として広がる美容目的の施術には倫理的な問題が多く含まれている。

こうした状況が生まれる背景には、医師たちのキャリア形成を支える制度や、医療をめぐる環境が十分整っていないことも大きい。行政には、経済的負担や規制の見直しを含む医療制度改革を進め、医師が安心して医療の本質に集中できる環境を整える責任がある。女性の健康と権利を守るためにも、医療と美意識にまつわる社会全体の意識改革が急務だ。

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