「他人に気を遣って周りに合わせすぎてしまう」という過剰適応

トラウマが作り出す行動上の問題は様々ですが、典型的なものとして「過剰適応」が挙げられます。

過剰適応とは、簡単に言えば、「他人に気を遣いすぎてしまう、周りに合わせすぎてしまう」ということです。トラウマを負った人は、いろいろなことを先回りして考えることが当たり前になっています。相手の感情や考えを過度に忖度そんたくしてしまう。相手の雰囲気やちょっとした表情を読み取って、相手が怒らないか、気分を害さないか、と考えてしまうのです。多くの人が集まるような場面であれば、いろいろな段取りに過度に気を回したり、お世話しようとします。

しかし、本当の意味で相手の気持ちを汲めているわけではありません。むしろ、相手の意識下の不全感を忖度し、巻き込まれてしまうことも少なくありません。先回りして相手の気持ちを察しようと下手に出てしまい、相手に軽んじられたり、ハラスメントにさらされたり、といったこともしばしば生じます。

オフィスで会議を開くビジネスパーソン
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気を遣いすぎて余裕ゼロ、逆に「空気が読めない」と思われる

過剰に気を遣うということは、余裕が失われ適度さがなくなるということでもあります。過緊張もそうですが、過剰適応も常に脳(コンピューターで例えればCPU)や交感神経が働いている状態です。そのため、脳のエネルギーを使い果たし、低血糖のようにボーッとした状態になることもあります。気を遣って動き回っていたかと思うと、エネルギー切れを起こして固まって、表情もなくなり、気を遣えなくなってしまうことも起きます。エネルギーが余っている状態でも考えすぎて逆に動けなくなる、気を遣いすぎて空回りしてしまうこともあります。

そのため、内面では気を遣っているにもかかわらず、人からは「あいつは気を遣えない」として誤解されることもあるのです。

過剰適応による空回りは、「空気が読めない」という結果となり、発達障害かも? と疑われてしまう原因にもなるのです。