親たちが子供の“失敗”を恐れている
「とにかく子供に、失敗させたくないんです」
全国各地の学校で講演したり、小中学生や高校生への学習指導のお手伝いをしたりするなかで、最近親御さんから、お子さんの教育に関して、冒頭のようになご相談をいただくことがあります。
「何かに躓いたり失敗してしまうと、子供が悲しんだり苦しんだりしてしまうので、なるべく失敗させないような指導をしてほしい。受験も合格圏内の安全な学校(=不合格にならない学校)を目指させたい」とお考えの親御さんが増えてきている印象があります。
小中学生の親御さんだと「受験は安全に合格できる学校だけを受験させたいので、模試でA判定の学校以外は受験させたくありません」とおっしゃったり、高校生の親御さんでも「親元を離れて生活するのはまだ難しいと思うので、東京近辺の大学以外は受験させたくありません」とおっしゃったり。
また大学受験だと、「一般入試ではなく、年内入試で極力終わらせたい」という家庭は年々かなり増加していると感じます。ペーパーテスト一発勝負ではなく、指定校推薦で失敗することなくすんなり合格してほしい、と。
受験だけに限った話ではなく、資格試験も同様で、「絶対に合格できるなら英検を受験してもいいけれど、合格できないのであれば受験してはダメ」という方針の家庭も少なからず存在しています。
「失敗させない指導」は大失敗を招く
こうした親御さんのお気持ちは、理解できます。お子さんには、なるべく苦しい思いはさせたくないですよね。勉強や学校・受験がつらいと感じさせたくないという親心は、こちらにもよく伝わってきます。
でも、「失敗をさせない指導」は、長期間続けていると大失敗を招いてしまうことがあるのです。実際、東大生の親御さんにお話を聞くと、その多くが勉強でもそれ以外のことでも、小さい時に「子供にわざと失敗させる」指導をしていることに驚かされます。
そもそも、「失敗をさせない指導」というのはどういうものでしょうか。
仮に、「定期テストで20番以内になりたい」という挑戦をしようとしている生徒Aがいたとします。Aさんにとって、「定期テストの順位が16位だった」という結果は「成功」だと感じられると思います。
でも、「定期テストで10番以内になりたい」という挑戦をしようとしている生徒Bがいたら、Bさんにとっては「16位」という順位は「失敗」と感じられるでしょう。「10位以内になりたかったのに、16位だった!」と。ここまででおわかりいただけると思いますが、成功の場合も失敗の場合も、「16位」という結果は変わっていません。それなのに、目標の立て方によって、「成功」なのか「失敗」なのかが変わっているわけです。