世の中には自分と異なる意見も溢れている。頭のよい人頭の悪い人は、それらをそれぞれどのように受けとめるのか。医師の和田秀樹さんは「一つの答えに固執するスタンスからは卒業するのが賢いやり方だ。物事を決めつけ、自分の優位性にこだわる人はうつ病になりやすい」という――。

※本稿は、和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

和田秀樹さん
写真提供=筆者
和田秀樹さん

「そういう考え方もあるね」と言える人には、知性と品格がある

物事を自分なりに解釈したり、反論を展開したりするのは大切なこと。ただそのときに大切にしていただきたいのが、「自分の意見が絶対に正しい」という決めつけは持たないということです。

物事の本質をとらえようとするとき、たった一つの答えを追い求め、ほかの考え方は「不正解」として取り除こうとする方は多いと思います。私にもそういった時期はもちろんありましたが、50歳くらいからその考えを手放すようになりました。

どちらが正しいのかなんて、本当のところはわからないのです。だからこそ、さまざまな可能性があるのだと受容することが大切なのであって、そのように多面的に物事を見ることができる人は、知性と品格を感じさせます。

いろいろな選択肢を踏まえたり、多彩な解釈を展開できたりする人は、人間としての幅が広く見えるのです。

たとえば私は精神科医ということもあって、大きな事件が起きたときなど、メディアからその犯人の人物像の分析を依頼されることがあります。

マスコミとしては、「この人はこういう人で、だからこの事件につながった」という単純明快な答えを期待しているのだと思いますが、私は最低でも10個くらいの可能性を挙げ、多角的に意見を述べるようにしています。

医師として、「この人はこうです」と、人のパーソナリティを決めつけて断言するのは、非常に乱暴なことだと思っているからです。

クリニックで患者さんのカウンセリングをするときも、相手の話を聞きながら、少なくとも10通りほどの可能性を想定し、診療を進めるにつれて、可能性をしぼっていくようにしています。そうすることで、より適切な診療を施すことが可能になるのです。

世の中には自分の知らない、さまざまな可能性が溢れているものです。たとえば「売れっ子になる」「ヒットメーカーになる」ということ一つとっても、その方法は多様に考えられます。

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