韓国の合計特殊出生率は0.72
そもそも、韓国で不法就労者がこれほど増えたのは、韓国社会がいま極度の少子化に直面していることが遠因になっている。韓国政府は今年2月、2023年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子どもの推定人数)が、過去最低の0.72だったと発表した。
経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、出生率が1を下回るのは韓国のみだ(日本は同年で1.20)。
韓国で23年に生まれた子供の数は約23万人で、10年前と比べて半分近くまで減少し、こちらも過去最低を記録した。
韓国の少子化の原因には、就職難や都市部の地価高騰、多大な教育費負担といった経済的要因などがあるとされる。
韓国政府は06年から少子化対策を本格化させ、21年には総額280兆ウォン(約30兆円)もの巨額予算を投じてきたが出生率低下を止めることはできなかった。
このような中で労働者の確保が困難になった結果、外国人労働者の受け入れが進んできたと言うわけだ。
約18万5000人ものタイ人が韓国で働く
韓国での外国人労働者の受け入れ制度である「雇用許可制」が始まったのは2004年だが、23年5月時点での外国人労働者数は前年比9.5%増の92万3000人で過去最多を記録した。
特に農業や漁業といった第一次産業では深刻な人手不足が目立つといい、それをタイ人などの不法就労者が支えているケースは少なくないと見られる。
タイ外務省のデータによると、国外で働いているタイ人は合法、不法含めて少なくとも46万人いるとされる。その行き先のトップは韓国で約18万5000人に上る。
タイ人の不法滞在者はタイ語で「ピーノイ(小さな幽霊)」と呼ばれており、約6万4000人と言われる中国人不法滞在者の2倍以上だという。
タイ人の不法滞在者は雇い主からすれば賃金も安く使い捨ての労働力となるが、多くはタイでの月給が約1万バーツ(約5万円)程度の低所得層であるため、韓国で倍以上のお金を稼げるなら、不法就労のリスクを冒してでも行くメリットがある、と言うわけだ。